研究概要 |
樹木の繁殖器官は,しばしば植食性昆虫によって集中的に摂食されることが知られており,樹木の繁殖,更新に与える影響は大きいものと考えられる。しかしながら,植食性昆虫が,樹木の繁殖過程に与える影響を総合的に理解するにあたって,樹木の開花,受粉前の過程について調査されたことは少ない。 本研究では,二次林で種数および個体数の多いツツジ科木本10種を材料に,花芽,花を摂食する植食性昆虫群集を記述し,花芽生産数,被食数,結果数を定量的に調査した。さらに,モチツツジについては,長期の花芽生産数,被食数,結果数のデータを蓄積することで,植食性昆虫が,樹木の繁殖量の年次変動に及ぼす影響を明らかにした。 調査地である京都市北区上賀茂での二次林において、ツツジ科10種の中でも最もモチツツジの花芽被食率が高く、株によっては100%近くに達した。モチツツジの花を加害する主な植食性昆虫は4種類(ゾウムシ科1種、ハマキガ科1種、シャクガ科2種)であった。さらに、本年度を含めて、過去6年におよぶ花芽生産量と被食率の関係を10株について検討したところ、株間、年次間で花芽生産量は大きく変動したが、被食率の変動は小さかった。これらの結果、モチツツジでは、常に高い植食性昆虫による被食圧を受けていることが示唆された。
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