研究概要 |
前年度のapoplastocyanin(apoPc)のフォールディングに伴う拡散係数変化測定につづき、過渡回折格子(TG)法により、apoPcのフォールディング初期におけるエンタルピー変化(ΔH)を測定した。その結果、まず修飾基の光解離で約25kJ/molの吸熱(ΔH>0)、体積収縮(修飾変性状態U→中間体I)ではさらに約50kJ/molの吸熱、I→終状態Nの過程ではさらに約20kJ/mol吸熱が観測された。反応の自由エネルギー(ΔG=ΔH-TΔS)が負であることから、apoPcのフォールディング初期過程はエントロピー駆動(ΔS>0)であり疎水相互作用により駆動されることがわかった。 また、apoPCのフォールディングでの拡散係数変化についてより詳しく考察するために、蛋白質構造と拡散係数の相関を明確にする必要がある。そのために,光ラベル化剤を用いて,myoglobin(Mb)の酸変性過程における拡散係数(D)とCD変化を測定した.その結果,ホロMbではpH変化に伴うDとCDの変化が一致したが、アポMbではpH4中間体において一致しなかった。このことと溶媒接触表面積の測定結果から、この中間体は疎水核に水がトラップされた構造を持つと推測された。この中間体はkineticな中間体と同じ構造をしていることがNMRで報告されている。したがって、蛋白質フォールディング初期の駆動力は疎水相互作用であるが、それには水分子を介した疎水相互作用も関与していると考えられる。このような相互作用はα-lactoalbuminにおいても提案されている。 以上、本研究により、蛋白質フォールディングに伴う蛋白質-水間相互作用の変化を明らかにできた。
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