研究概要 |
新規バイオインターフェースの創製を目的として、表面開始リビングラジカル重合(LRP)により合成した濃厚ポリマーブラシと生体関連物質の相互作用の解明を行った。具体的には、まず、親水性ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)ブラシへのタンパクの吸着挙動を水晶振動子(QCM)および顕微鏡観察により詳しく調べた。PHEMAブラシの密度(グラフト密度0.007〜0.7chains/nm^2)や鎖長(グラフト膜厚にして2〜10nm)、タンパクの大きさ(IgG,BSA,Myoglobin,Aprotinin)を変えて実験を行った結果、タンパクの吸着挙動がグラフト密度とタンパクの大きさの相対的な関係に依存することを見いだした。すなわち、ブラシ膜はその隣接グラフト点間距離に比べて小さいサイズのタンパクを(PHEMAキャスト膜と同様に)著しく吸着するのに対し、相対的に十分大きいサイズのタンパクをグラフト層から完全に排除し、その吸着を阻害すること(非特異的相互作用の抑制)を明らかにした。 更に、上記QCM測定においては困難であった、比較的弱いと考えられるブラシの最表面とサイズ排除されたタンパクとの相互作用について、クロマトグラフィー手法により検討した。ここでは、シリカモノリスカラムを母材として、表面開始ATRPにより、その細孔内表面に構造の明確なPHEMA濃厚ブラシを付与した。このカラムに対する標準プルランの溶出挙動を測定し、低分子量領域にブラシ層によるサイズ分離が支配的な領域(濃厚ブラシにサイズ排除される領域)が現れることを確認した。次に、大きさの異なるタンパクの溶出実験を行った結果、比較的小さいタンパクのみがブラシ層に進入し、層内で強い吸着的相互作用を受けるのに対して、ブラシ層からサイズ排除されたタンパクはブラシの最外表面とほとんど相互作用しないことを明らかにした。
|