ゾル-ゲル法によりサブミクロン領域に連続貫通孔を有するマクロポーラスシリカを作製し、光多重散乱媒質としての応用を検討した。出発組成を適切に選択することによりサイズの揃った連続貫通孔を有するモノリス型シリカを得ることができ、またその細孔径も2桁程度にわたって制御することができる。光学測定により媒質内部における光の平均自由行程と細孔径および細孔の体積分率との関係を調べ、細孔を散乱中心とみなすモデルで平均自由行程の変化を定性的に説明した。マクロポーラスシリカが従来の微粒子系に比べ散乱強度の厳密な制御が簡便に行なえる散乱媒質となりうることがわかった。 光の進行が散乱により大きな影響を受けるため、多重散乱媒質中の発光中心は特異な発光挙動を示すと予想される。そこで出発溶液にサマリウムの塩酸塩を混合し、サマリウムイオン含有多孔体を作製し、その発光特性を調べた。従来の溶融急冷法と熱処理を組み合わせる方法では希土類を均一に分散したポーラスガラスの作製は非常に困難であるが、本方法では簡単に作製することが可能である。共焦点顕微鏡観察により骨格内部に均一にサマリウムイオンが分散していることを確認した。その後光化学反応による希土類イオンの価数変化と多孔体による多重散乱を組み合わせたホールバーニング効果を検討した。多孔体の散乱強度によりホール形状を制御できることがわかった。 また、温度変化や電圧印加により配向状態を変える液晶を多孔体の細孔内に導入し、温度変化による散乱強度の変化を測定した。液晶(5CB)のネマチック相⇔アイソトロピック相間の転移温度(35℃)を境として散乱強度がおおきく変化することがわかった。これは相変化により媒質内で入射光が感じる屈折率に変化が生じたためであり、散乱強度を外部から制御することが可能であることが示された。
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