研究概要 |
本年度は,世界都市システム研究に関する包括的なレビューをおこなった.これまでは,NPO/NGOといった非営利・非政府組織を取り上げ,その空間組織やネットワーク,また地域との関係性などについて,インタビュー調査を中心とした質的調査を用いた研究を進めてきた.本年度は,これらを都市システム研究の再構築に結びつけるという問題意識から,近年の世界都市システム研究の展開を包括的に整理し,さらにこれまでの事例研究の成果を踏まえ,今後の方向性を議論した. 近年のグローバル化の進展に伴い,世界全体を視野に入れた都市システムが注目されるようになり,とりわけ1990年代後半以降は,理論的検討や仮説提示に加えて本格的な実証研究も進められるようになった.この研究領域を切り開いたのは,GaWCという研究グループである.そこでまず,GaWCが想定する基本的な都市システム概念を抽出した.第一に,世界都市が他の世界都市との関係性の中において成立するという世界都市概念の転換を指摘し,第二に,領域的な国民国家のモザイクに対して,世界都市のネットワークというオルタナティブなメタ・ジオグラフィーを提示するというGaWCの根本的な問題意識を示した.続いて,急速に研究が進みつつある実証研究を整理し,連結ネットワークモデルや社会ネットワーク分析などの手法,グローバル・サービス企業などの関係性データを中心としながら,さまざまな手法・指標によって,多元的な世界都市システムが実証的に描き出されてきた点を明らかにした.そして今後の方向性として,NPO/NGOが企業・政府に対するオルタナティブな組織として,グローバル化時代の都市システム再構築に寄与しうる可能性を提示し,このような組織の観点を明示的に都市システム研究に取り入れる道筋を示した.
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