研究課題/領域番号 |
04J01074
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
社会学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 智信 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2006年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2005年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2004年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
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キーワード | 貨幣 / 近代資本主義 / 法人 / イスラーム / 中華帝国 / 時間意識 / 宗族 / 均分相続 / 中国 / 永続 / 非連続 / 会社 |
研究概要 |
本研究員は、採用1・2年度目にイスラームについての研究を通じて、「法人」は近代資本主義における最も基礎的なユニットである、という知見を得た。本年度は、イスラームと並ぶ商業文明を築いた中華帝国についての分析を通じて、同様の知見が得られるのかどうかを検討する作業に取り組んだ。その作業は、現在執筆中である著書『イスラーム・中国の倫理と反資本主義の精神』(弘文堂)において引き継がれており、その概略は以下のとおりである。 中国の経済に関する研究には相当な蓄積があるが、その多くは、ウェーバーの仮説に対して否定的である。実際、近年の実証的研究によれば、少なくとも明・清時代の中国には、経済の発展を阻害するような制度的要因は見当たらないように見える。しかし、これらの研究はまだ、ウェーバーが提起した問題を解決してはいない。 ここで、近代資本主義に対する「法人」の重要性を考慮するならば、中国における「宗族」という親族組織が問題の中核に現れてくる。宋代以降、中国において経済的な成功を収める方法の一つは、科挙に合格し官僚となることであったが、徹底した均分相続の慣行によって、官僚の資産は瞬く間に分散してしまう傾向にあった。ここで、そうした資産の分散を防ぐ手段として「宗族」という古代の親族組織の再形成が要請される。じつはこうしたプロセスは、西欧における「法人」形成のプロセスとかなりの部分で類似している。それはつまり、中国の「宗族」制には西欧的な「法人」を胚胎させうる可能性が十分にあったということである。だが実際には、西欧において「法人」が果たしたような決定的な役割を、中国の「宗族」が担うことはなかった。このことは、「宗族」と「法人」との間に表層的な機能の類似性には還元できない根本的な差異が存在することを推察させる。その差異を明確に論じること、これが本年度、本研究員が中心的に取り組んだ課題である。
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