研究概要 |
本年度の研究では、1,フォトニック結晶レーザの極めて見通しの良い解析が可能となる2次元結合波理論の構築を目指すとともに、2,出射されたリング形状レーザビームを用いた光ピンセット効果の実証を行った。 1,フォトニック結晶レーザの解析には、従来、平面波展開法およびFDTD法と呼ばれる数値計算法が用いられてきたが、両者とも、レーザ特性の基本的な物理的機構の理解を与えるものではなく、得られた結果の解釈と妥当性の判断が困難という問題があった。本研究では、周期的屈折率分布に基づく2次元面内での光の回折・結合現象を、より簡便にモデル化し、物理的に極めて見通しの良い理論の構築に成功した。実験との詳細な比較をも行い、その妥当性・有効性を示すことにも成功している。具体的には、TE偏光の場合に強く表れる上下方向への光の回折(面発光機能)をも取り込んだ計算を行い、各モードの閾値利得を導くと同時に、計算結果と実験結果とがうまく対応することを確認した。さらに、端面での反射等の影響を取り込んだ解析も行い、適切な端面反射の導入により、モードの選択性が格段に向上し、より安定な単一モードコヒーレント発振を実現することが可能になることを示した。(Appl.Phys.Lett.,Vol.89,pp.021101-1(2006)) 2,真円の格子点形状をもつフォトニック結晶レーザより出射するレーザビームの断面強度は、リング形状を示す。こうしたリング状ビームは、その内部に不透明な微粒子を捕捉することが可能であり、液中の微粒子を捕捉・操作する光ピンセットへの応用が期待されている。そこで、水中のタングステン微粒子(直径約5μm)にフォトニック結晶レーザより出射したリング状ビームを照射したところ、微粒子がビーム内部へ捕捉されることを確認した。その際の捕捉力は、10mWのビーム強度で0.5pN程度であり、操作に十分であることも分かった。(Electron.Lett.,Vol.43,No2,pp.107(2007))
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