研究概要 |
生化学分析を微小なチップ上で実現するμTAS(Micro Total Analysis Systems)に関する研究が近年盛んに行われている.本研究では,μTASの基盤技術となるマイクロ流体デバイスの好適原理・好適機構を構築することを目指し,マイクロ流路における混相流について研究を行った. 本年度では,前年度まで研究を進めてきた微小液滴生成技術を応用し,生体細胞のカプセル化技術を構築した.構築した方法では,微小液滴の溶液としてアルギン酸ナトリウムおよび生体細胞を混合した溶液を使用し,まず生体細胞を含む微小液滴を生成する.そして,生体細胞を含む微小液滴とカルシウムイオンを含む液滴をマイクロ流路内部で合体させることにより,液滴をゲル化させ,カプセルを生成する.以上の方法により,直径100μm程度の生体細胞を含むカプセルを連続的に生成できる流体システムを構築した. また,微小液滴の生成モデルに基づいて,カプセルの生成機構を考察し,カプセル形状の最適化を行った.構築した生体細胞のカプセル化技術では,マイクロ流路内部で液滴を合体させるため,液滴にマイクロ流路の流体力学的な壁面効果が加わり,最終的なカプセル形状が球形とならない.そこで,液滴を合体させる位置より下流においてマイクロ流路の壁面効果を軽減する様に,マイクロ流路形状を最適化した.最適化したマイクロ流路を用いて実験を行ったところ,カプセルの形状は改善され,変形量の小さなカプセルが生成できることを示した. さらに,微小液滴生成技術を応用して,微小気泡生成技術を構築した.そして,構築した微小気泡生成技術により,直径100μm〜200μm程度の気泡を生成することが可能であることを示した.また,微小液滴の生成モデルを微小気泡生成モデルへ拡張し,流速の条件やマイクロ流路の流体力学的壁面効果が微小気泡の直径に与える影響について詳細に明らかにした.
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