研究概要 |
湖底堆積物中のU・Thには、土壌粒子に含まれている陸源性のU・Th成分(^<238>U,^<234>U,^<232>Th,^<230>Th)と湖内で溶存していたウランが懸濁物質に吸着・付着後沈降したU成分(^<238>U,^<234>U)、さらにそれらから成長したU・Th成分(^<234>U,^<230>Th)を含めた自生性のU・Th成分がある。そのため、自生性のU・Th同位体濃度を用いる^<238>U-^<234>U法、アイオニウム(^<238>U-^<230>Th)年代決定法の適応時に最も問題となるのは、岩石由来のU・Th同位体成分の見積もりである。本研究では、岩石中のU系列は放射平衡が成立していること、Th同位体にフラクショネーションがないという仮定の下、^<230>Thの成長量が無視できる表層堆積物の^<230>Th/^<232>Th放射能比を基準に自生性(成長)U・Thを見積もり、モデル式を用いて平均堆積速度を試算した。バイカル湖湖底堆積物の平均堆積速度は4.47±0.37cm/kyrと試算され、オービタルチューニング法により求めた4.31cm/kyrとよく一致する値が得られた。このように^<238>U-^<234>U法、アイオニウム(^<238>U-^<230>Th)年代決定法を用いて、湖沼堆積物の堆積年代を簡便に決定することが可能になった。 また、上記の陸源・自生性U・Th同位体組成は、気候変動に対応して変化していることが明らかになっている。これまでの研究では、堆積物中自生性>Uの変動は、湖水中のウラン濃度の増減に支配されているとの見解であった。今回新たに堆積物中の主要元素測定および解析から、自生性U変動は湖水のpH・アルカリニティ変動がキーポイントとなっている可能性が示唆された。これらは、周辺環境の乾燥・湿潤化による湖水蒸発散量に関与していると考えられる。
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