研究課題
特別研究員奨励費
MgO-SiO_2系において、含水マントルの浅部において生成されるマグマの組成はSiO_2成分に富むことが久城らによって明らかにされた。しかし、この現象は、上部マントル最下部に至る条件(約10GPaに相当)までで、更に高圧では生成されるマグマの組成はまったく逆のMgO成分に富むことが明らかになった。本研究では、上述のような高圧含水マグマの熔融様式の変化に伴う構造の変化を、原子レベルの微視的観点から実験的に明らかにすることを目的としている。高温高圧実験は、KEKのAR-NE5Cビームライン設置のMAX80、及び大型放射光施設SPring-8のBLO4B1ビームライン設置のSPEED1500の2つのマルチアンビル型高圧発生装置を使用して行った。高圧状態の含水マグマのX線回折測定は、白色の放射光X線を用いてエネルギー分散法により行った。今年度は、14.9GPaまでの圧力領域でMg含有量を変えた含水珪酸塩メルトのデータ収集を行った。珪酸塩メルトのX線回折強度曲線の第一ピーク(First Sharp Diffraction Peak : FSDP)は、SiO_4四面体からなるネットワーク構造を反映したピークと考えられており、それらのピークシフトは無水のMgSiO_3メルト(Funamori et al.,2004)とのものと大きく異なり、全ての組成において2-3GPa付近で特徴的な屈曲をもつことがわかった。この屈曲とはつまり、低圧領域における急激な短距離化、高圧領域における長距離化のことを意味している。この含水珪酸塩マグマのネットワーク構造の圧力変化の解釈として、2GPa以下の圧力領域では水の効果(siOHの形成)によってネットワーク構造が分断されFSDPの位置は短距離側へ大きく位置していたと考えられる。一方2-3GPa付近から生じる長距離側へのシフトは水がMg(OH)の形でメルトに溶け込むようになるために珪酸塩のネットワーク構造が卓越し始めたと考えることができる。このような水の特性変化は、これまで高圧実験によって調べられてきた含水高圧条件で生成されるMgO成分に富むマグマ生成機構と密接な関係を持っている可能性が高い。
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