研究概要 |
本研究では、これまで利用されてこなかった半導体中の電子スピンおよび核スピンの光学的・電気的性質を明らかにすることにより,スピンを用いた量子機能デバイスの創生へ向けた新しい半導物性を探求することを目的としている。本年度得られた主たる成果は以下の通りである。 n型GaAs/AlGaAs(110)単一量子井戸を分子線エピタキシ法により成長し,その表面に金の半透明ショットキーゲート電極を形成したデバイスを作製し,ゲート電圧により2次元電子のキャリア密度を7x10^<11>cm^<-2>以下で連続的に変化できることを確認した。このn型GaAs/AlGaAs(110)単一量子井戸を用い,低温・磁場中において時間分解ファラデー回転測定を行い電子スピンおよび電子スピン・核スピン間の相互作用の振る舞いを詳細に調べた。その結果ゲート電圧を印加して2次元電子の電子密度を制御することにより、超微細相互作用と動的核スピン分極が大きく変調できることを示した。また同じ構造において,核スピンの縦緩和時間を計測できる光学的手法を開発し,ゲート電圧によって縦緩和時間が約20秒から約200秒の範囲で制御されることを明らかにした。さらにフォトルミネッセンスや電気輸送特性を調べることにより,量子井戸内の2次元電子密度の変化によって金属-絶縁体遷移が生じ、電子の波動関数の局在・非局在の変化により超微細相互作用の大きさが変調されているモデルを示した。
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