研究概要 |
重度知的障害のある自閉症者の自己とコミュニケーションの発達について検討することを目的として研究を行った。具体的には,以下の2点について研究を行った。 ひとつは,青年期自閉症者における教示行為の発達と障害について検討した。その結果,健常児に比べると教示行為の獲得は遅れること,しかし,発達的に3歳以上になると教示行為を獲得することが明らかになった。この結果から,青年期自閉症者は,教示行為の背景にある自他分化に障害をもつことが示唆された。 もう一方は,指示待ち行動を示した自閉症者に関する事例検討を行った。指示待ち行動とは,白石(1994)によれば,「他者の指示に対して従属的な活動が増大し,時には他者の指示がないと活動を起こせないという行動であり,青年期から目立ってくる」という定義がなされている。約2年にわたって参加観察を行った結果,以下の点が明らかになった。(1)他者が視覚的に認知された場合に,自発的行動が消失し,指示待ち行動が発生しやすいこと,(2)その他者は,施設職員など自分より能力の高い者に限定されること,(3)要求行動や拒否的行動などがみられにくいこと,である。以上の結果から,指示待ち行動は「意欲のなさ」といった個体内の問題よりも,主体的な自我が弱いまま他者理解が一定すすむことによる「自己-他者」関係のなかで立ち現れるものであることが仮説として提起された。 以上述べてきたふたつの研究成果およびこれまでの研究成果(赤木2003,2004,いずれも発達心理学研究に掲載)をあわせて,「重度知的障害のある青年期自閉症者における自己発達と自他関係の構造」と題する博士論文にまとめた。
|