タンパク質は3次構造に折りたたむことで機能をもつため、網羅的に構造を決定し、構造情報から機能に迫るというアプローチは有用である。本研究では、ゲノムワイドな遺伝子機能解明に向けて、私が現在まで構築してきたデノボ立体構造予測法の改良およびテストを行った。改良としては、既知構造データベースのアミノ酸側鎖間に関する統計を基にして、エネルギー関数を導出した。このエネルギー関数のテストは次の方法で行った。 1.本研究で開発した手法と、現在世界最高の予測法と認知されているロゼッタ法と比較を行った。38個のテストタンパク質についてブラインドテストを行ったところ、どちらの手法も12個という同数についてトポロジーレベルでの構造予測に成功した。この結果から、本研究の手法は世界トップレベルの精度であり、実用レベルにあることが分かった。さらに、2手法で得られる構造集団から予測構造を選ぶ方法を採用することによって16個について成功した。このことから、デノボ立体構造予測において、複数の手法を組み合わせることで単独の手法よりもより精度の高い結果が得られることが分かった。 2.立体構造予測ブラインドテストコンテストCASPに参加した。このコンテストには、世界中の有力な予測グループのほぼ全てが参加する。本研究で開発した手法は、非ホモロジー部門で200を超える参加グループ中9位の成績を収めた。このテストによっても、本研究の手法は世界トップレベルの性能であることが示された。
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