研究概要 |
高温エリプソメータとコールドクルーシブル放射率測定装置を用い,Ni-Cu及びNi-Cr合金の放射率を測定し,推算式の構築を試みた。Ni-Cu合金の放射率は、すべての組成で負の波長依存性を示し、また正の温度依存性を示した。さらに、上に凸の放物線型の組成依存性を示した。この挙動を説明するために、自由電子モデルによる放射率の計算値と実験値との比較を行った。自由電子モデルによる放射率の計算値から,放射率の温度・組成依存が自由電子によることを示した。また、実験値と計算値の差がd電子の寄与によるものであると考え、Ni濃度が約20at%以上の領域では、d電子の寄与は組成・温度によらず一定で、波長のみの関数であることを明らかにした。このことを利用し、Ni-Cuの放射率を温度,組成及び波長の関数として表し、放射率の推算式を構築した。 しかしながら、Ni-Crの放射率におけるd電子の寄与は、温度・組成・波長のいずれにも依存し、同様の手法による推算式の構築は不可能であった。推算式の構築にこのような手法が適用できるか否かは、成分元素の状態密度に依存すると考えた。
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