研究概要 |
増殖因子により活性化された増殖因子受容体はエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれ、エンドソームを経由してリソソームへと運ばれ分解される。これらの受容体はユビキチン化を受け、エンドソームにおいて一連のユビキチン結合蛋白質複合体により認識される。エンドソーム上で機能するマシーナリー蛋白質のうちいくつかはモノユビキチン化を受けており、ユビキチン化によりそれらの蛋白質の機能調節およびエンドソームにおける選別輸送の調節が行われていることが示唆されている。今年度はUBPYがこれらのエンドソーム蛋白質の機能調節を行っている可能性について検討した。UBPYの酵素活性部位変異体発現細胞、およびRNAi法により内在性のUBPYをノックダウンした細胞ではユビキチン化蛋白質が主に初期エンドソーム上に蓄積した。さらに、UBPYの機能阻害細胞では初期エンドソームの形態変化が引き起こされた。電子顕微鏡観察により、エンドソームの形態変化はエンドソームの凝集であること、凝集したエンドソーム間には高電子密度の領域が存在することが明らかになった。次に、モノユビキチン化を受けることが報告されているエンドソーム蛋白質(Hrs, STAM, Eps15, Tsg101)のユビキチン化レベルをUBPYが調節している可能性を調べた。その結果、UBPY機能阻害細胞ではEps15のユビキチン化レベルが大きく上昇していることを見いだした。UBPYは細胞内でEps15と結合し、UBPYの酵素活性部位変異体ではその結合が増強されること、UBPYがin vitroでEps15の脱ユビキチン化を行ったことから、Eps15はUBPYの基質となり得ることが示された。またEps15はUBPY機能阻害細胞において凝集したエンドソーム上に蓄積し、ユビキチン化蛋白質と共局在した。以上の結果から、UBPYはエンドソーム上の蛋白質のユビキチン化レベルを調節し、その調節がエンドソームの形態維持に必要であることが示唆された。
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