研究課題
特別研究員奨励費
ナノスケールMOSFETを対象とした量子輸送デバイスシミュレータを用いて、ゲート長9nmのバルクMOSFETにおける不純物分布の影響について調べた。ソース・ドレイン領域のドーピング間隔をゲート長よりも長くするオフセットドーピングが、デバイスのオフ状態のソース・ドレイン間(SD)直接トンネル電流の抑制およびサブスレッショルド特性の改善に有効であることを明らかにした。バルクMOSFETにおけるフォノン散乱の影響を調べた。フォノン吸収過程によるオフ状態のSD直接トンネル電流増加がデバイス特性を劣化する。低温ではフォノン吸収過程を無視できるが、低温であってもフォノン散乱による電流減少はオフ状態よりもオン状態の方が大きく、デバイス特性が劣化することが分かった。また、音響フォノン散乱を加えてもデバイス特性への影響の傾向が変わらないことを明らかにした。極微細MOSFETにおける不純物の影響について調べた。ゲート長9nmのバルクMOSFETに散乱として取り入れた。オン状態ではチャネル領域の電子密度が高く、遮蔽効果により散乱が抑制される。その結果、オフ電流の減少が大きくなりデバイス特性が改善されるという結果を得た。また、ゲート電圧が極端に低い領域では不純物準位を介したSD直接トンネル電流が増加し、オフ電流の減少が緩やかになることが分かった。不純物の離散性についても調査した。ゲート長9nmのFinFETのチャネル領域に不純物を1つ導入し、クーロンポテンシャルとして取り入れた。p型不純物を導入すると電流が減少、n型を導入すると電流が増加した。n型の場合、チャネル障壁に井戸構造ができ、共鳴トンネル現象が生じた。ゲート電圧が高いほど遮蔽効果が強く不純物の影響は小さくなった。離散不純物の位置が、遮蔽効果の弱いチャネル中心に近くゲート電極から遠いほど、デバイス特性への影響が大きいことを明らかにした。
すべて 2005
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