研究概要 |
共役脂肪酸の中では、リノール酸の構造異性体である共役リノール(CLA)がよく研究されている。しかし、CLAの研究は、9c,11t-CLAと10t,12c-CLAの異性体を用いたものが大半を占めており、それ以外の異性体に関してはほとんど研究されていない。一方、共役脂肪酸以外の脂肪酸としては、トランス型脂肪酸がよく知られている。トランス型脂肪酸は油脂加工中に生成し、その生理作用として、心疾患や動脈硬化症を引き起こすということが報告されている。このような負の生理作用からトランス脂肪酸は欧米各国で着目されている。そこで本研究では、これまで生理作用が明らかとなっていない、トランス型かつ共役のリノール酸、9t,11t-CLAに着目して研究を行なった。 これまでのCLAの生理作用に関する報告は、抗癌・抗肥満に関するものが主であり、それ以外の研究は盛んには行なわれていない。そこで本研究では、マウス脾臓細胞を用いて、CLAの免疫システムに及ぼす影響についての検討を行なった。 また、これまでの脂肪酸を用いた細胞および動物実験は、ほとんどがエタノールまたはジメチルスルホキシド中に脂肪酸を分散させる手法、もしくはアルブミンとの複合体を調製する手法を用いて行なわれてきた。しかし、本研究では、エタノール中に脂肪酸を分散させる手法と共に、新たに、細胞膜と同じ構造を持つリポソーム中に脂肪酸を分散させる手法を用いた。その結果、エタノール中に脂肪酸を分散させる手法と比較して、リポソーム中に脂肪酸を分散させた方が、細胞に対する感受性が強く現れた。
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