研究課題/領域番号 |
04J09661
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
文化人類学・民俗学
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
古川 優貴 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2004 – 2005
|
研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
|
配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2005年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2004年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
|
キーワード | コミュニケーション / 語りの手法 / 語りの内容 / 寄宿制聾学校 / 学校教育 / 手話 / 語り / 障害者 / 聾者 / 言語 |
研究概要 |
ケニア西部ナンディ地区にあるKプライマリ聾学校では、手話による教育が実践されている。低学年の授業では手話が母語として教えられ、全ての授業は手話及び英語表記で行われる。授業外でも、生徒同士のみならず教職員同士もしばしば手話を用いることがある。 本研究では、第一に、こうした生徒を取り巻くコミュニケーション環境とそこで流通する情報について、ビデオカメラを用いて記録した。主として、授業風景、生徒同士の会話の記録を行った。第二に、複数の生徒の帰省先で、コミュニケーション手法のあり方と会話の内容を同様に記録した。以上の調査研究により、次のことが明らかになった。第一に、当聾学校では複数の手話が混在するが、生徒はそれを問題視しておらず、聾学校内でのコミュニケーションに不自由することはない。逆に、一種類の手話だけを習得して来校した、国内の大学からの研修生や教育実習生、海外からのボランティアの側がコミュニケーションに不自由するという意識を持つ。第二に、生徒が帰省先及びその近所や市場などの公衆の場でも、ホームサイン、リップリーディング、発話、筆記など多岐にわたるコミュニケーション手法を用いる。それだけでなく、家族のみならず、手話を知らない人々に、手話を教える事例が多くみられた。第三に、聞こえないことに関する語りは、調査者側が問わない限り見られなかった。 以上のことから、当聾学校の生徒にとって、医学的文脈における「聞こえないこと=障害」は、妥当ではない。また、近年主張されている「特定の手話を共通言語とする(音声言語に抑圧されている)言語的少数者としての聾者」という定義を、彼らに適用することも必ずしも妥当ではない。従って研究者の側による彼らに対する「障害者」あるいは「聾者」という規定をはずした上で、彼らの語り方と語りの内容を記録・分析することで、従来とは全く異なった議論を展開してゆくことが可能であろう。
|