研究課題/領域番号 |
04J09938
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
美学・美術史
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山上 紀子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員PD
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2006年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2005年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2004年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | オディロン・ルドン / フランス絵画 / 肖像画 / ゴブラン織り / 芸術と社会 / 装飾 / コレクター / 出現 / 19世紀 / 20世紀初頭 / オデロン・ルドン / 19世紀フランス / 受容研究 / 画商 / 展覧会 |
研究概要 |
19世紀後半から20世紀初頭の美術をめぐる社会動向を考慮しながら、ルドンが晩年に様式変化を見せた要因を探ってきた。 第一に、ゴブラン製作所から受けた注文制作をもとに、美術制度改革やフランス伝統芸術復興の動きとルドン芸術に対する社会的評価とのかかわりを考察し、この注文によって画家は重要な影響を受けたことを指摘した。 第二に、1894年のデュラン=リュエル画廊における個展以降、美術批評家および象徴主義作家から美術愛好家へと入れ替わったルドン芸術受容者層の変化と拡大のメカニズムを探った。 第三に、ルドンが生涯を通じて手がけた100点を超す肖像画の表現と受容者との緊密な関係、それと画家のテキストとの関係を確認した。画家はレンブラントこそは肖像画芸術の頂点であるとみなし、光を制御し細部を省略する方法と精神の表出を第一とする態度を手本とした。しかし1898年以降、ルドンが新しい顧客のために用いた光と色彩に満ちた表現はその理想と矛盾を見せている。ルドンが変化を強める一方で、テキストによって同時代のレアリスム画家たちの肖像画を厳しく批判し、彼らをレンブラントの対極にあるフランス・ハルスの系譜に位置づけた意図は、自らの正統性を主張することにあったと考えられる。作品とテキストとのあいだの矛盾、テキストの戦略性を指摘した(日仏美術学会口頭発表、2006年12月1日)。 第四に、ルドンの作品《出現》の源泉に関する調査結果を現在まとめている。この作品についてはモローの《サロメ》からの影響が指摘されてきたが、この女性像は、1877年からブーローニュの森の馴化公園で一般公開された小部族の相貌との関連を見せている。また「切断された頭部」は、ルドンが「眼球」を発展させた球体モチーフのひとつである。《出現》に描かれたのは、進化論を象徴する「眼球」(=頭部)が混沌から突如現れ出る瞬間、すなわち生命の起源のテーマであり、この作品には、人間の起源への社会的関心と、ダーウィニスムへの共感が認められる。
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