研究概要 |
本研究は,わが国では実験・実証レベルにある森林バイオマス生産・収穫技術の開発・システム化に関する研究を,導入・普及レベルへと発展させることを目的として,平成16年度より3年間の予定で開始された。しかしながら,研究代表者が平成16年度終了の時点で特別研究員の身分を喪失するため科学研究費補助金を辞退せざるをえず,以下の調査を実施することにより,標記研究課題を終了することとした。 まず大型チッパ(タブグラインダ)による林地残材の粉砕作業に関する実験を行い,その生産性と,大型チッパの補助機械を考慮に入れた総費用を計算した。生産性については,フィンランドの事例と同水準の高いものとなる結果が得られた。また,わが国では高いことが問題とされる粉砕・輸送コストについては,大型トラックが粉砕されたチップを1日に3回輸送できれば,北欧諸国で実際に行われている事例と同水準にまで低減できることが確認された。 一方,事例研究としてスウェーデン・ベクショー市を訪問し,森林バイオマスの生産・収穫からエネルギー利用にいたる一連のシステムを調査した。バイオマスの生産・収穫現場では,森林バイオマス収穫専用機械の稼働状況を調査し,チップをエネルギープラントまで輸送する流通システムとの連携が重要であることを確認するとともに,健全な木材生産が,エネルギー資源としての森林バイオマスの安定的な確保には不可欠であることが示唆された。 以上を総括すると,林地残材のような森林バイオマス資源をエネルギーとして利用するためには,バイオマスの低コスト生産・収穫技術の開発・システム化はもとよりバイオマスの流通システムの確立,ひいては森林産業の基幹となる木材生産の健全性が不可欠であるといえる。
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