研究課題
特別研究員奨励費
まず、アメリカ現代史においてニューディール期と並んで「福祉国家体制」形成期とされる、1960年代後半の福祉政策「貧困との戦い」をとりあげ、人種とジェンダーをめぐる諸問題の考察を行った。従来政策決定過程から排除されてきた「貧困層」が自治体や民間団体の代表者とともに参加することを連邦補助の条件とした「コミュニティ活動事業(CAPと略)」をロサンゼルスの事例を中心に取り上げ、黒人指導者が「貧困との戦い」を「貧困層」にとって新たな政治的機会を生み出す<せめぎあいの空間>へといかに再編成したかを検証した。その成果として、8月1日から3日にかけて、立命館大学で行われた、京都アメリカ研究夏期セミナーにて学会報告を行った。また、8月に渡米し、カリフォルニア州ロサンゼルス、サシディエゴにて史料収集・調査を行った。さらに、10月12日から15日にかけて、アリゾナ州Scottsdaleで行われた、第45回Western History Associationにて学会報告を行った。第二に、1970年代前半に自治省の下で行なわれた日本の「モデル・コミュニティ」事業考案の背景を分析するため、総務省での史料収集及び関係者への聞き取り調査を行なった。なぜ日本で1960年代末に「コミュニティ」事業が社会福祉事業の中心に位置づけられることとなったのか、アメリカの福祉事業が日本でどのように紹介され「モデル・コミュニティ」事業の制定・施行に影響を与えることとなったのかを検討した。第三に、在日外国人の側からの「コミュニティ」形成の運動及び福祉事業の展開を川崎市の事例を中心に検討するため、2005年9月から2006年2月にかけて川崎にて調査を行なった。より具体的には、川崎の桜本地区における、在日大韓基督教川崎教会を基盤として誕生した青丘社という社会福祉法人が、どのように「国民」に限定した国家主導の「コミュニティ」とは異なる、「ともに生きる地域社会」づくりを進めていったのかを分析するため、川崎市ふれあい館資料室や川崎市公文書館等で史料収集を行い、関係者への聞き取り調査を行なった。
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Proceedings of the Kyoto American Studies Summer Seminar, 2005 (Center for American Studies, Kyoto : Ritsumeikan University). (未定)
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