研究概要 |
今年度は、現場培養実験により得られた知見を自然界の有孔虫サンプルに応用し、環境指標としての有用性を検証することを目的として研究を行った。KT04-04,KT04-26,KT05-18航海により得られた相模湾深海底堆積物サンプルから11種約15000個体の底生有孔虫を拾い出し、底生有孔虫のステロール組成とその炭素水素同位体比、底生有孔虫の有機物の炭素窒素安定同位体比を測定した。 底生有孔虫の脂質組成には、種ごとに大きな変異を見せたものの、地点、季節による変異はほとんどみられず、種に特有のステロール組成を保持することが明らかになった。これは、食性のほか堆積物中の深度分布、また系統関係を反映している可能性が示唆された。この、種特有のステロール合成の可能性は、ステロールの炭素水素同位体比測定結果からも支持された。底生有孔虫の炭素窒素安定同位体比の分析の結果からは、底生有孔虫は沈降有機物や堆積物の一次消費者であり、なおかつ多細胞メイオ・マクロベントスの重要な有機物源となり、深海底の食物網における重要な構成要素であることが示された。 これらの結果は、Ocean Science Meeting 2006,英国微古生物学会,および日本古生物学会などにおいて発表した。また、前年度の結果の一部は学術誌へ既に発表され、他の結果も学術誌への投稿に向けて準備中である。
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