研究概要 |
ATP感受性カリウム(K_<ATP>)チャネルは、心臓、血管、膵臓、神経など様々な臓器に存在して、代謝的変化を細胞機能に反映させるという点で重要な役割を担っている。このチャネルはチャネル孔を構成するサブユニット(Kir6.X)とスルフォニルウレア受容体(SUR)からなることが知られている。特に心臓においては、Kir6.2とSUR2Aによって構成される細胞膜K_<ATP>チャネルのみならず、ミトコンドリアにもK_<ATP>チャネルが存在し、これらのK_<ATP>チャネルが虚血心筋保護において重要な働きをしていると考えられている。以前、Kir6.2ノックアウトマウス、すなわち心筋細胞膜K_<ATP>チャネル機能が欠失しているマウスを用いた研究から、Kir6.2とSUR2Aにより構成される細胞膜K_<ATP>チャネルが内因性虚血心筋保護機構に不可欠であることを明らかにした(Suzuki et al.,J. Clin. Invest.,2002)。しかしながら心筋細胞にはKir6.2のアイソフォームであるKir6.1も存在するものの、その役割は未だ不明である。今回Kir6.1を心臓に過剰発現させたKir6.1トランスジェニックマウスを用いて、心臓におけるKir6.1の役割について検討した。ランゲンドルフ摘出灌流心を用いた虚血・再灌流実験では、野生型マウスに比べKir6.1トランスジェニックマウスでは再灌流後の左室収縮機能の回復が有意に良好であった。また、TTC染色で測定した心筋梗塞巣も野生型マウスに比べKir6.1トランスジェニックマウスでは有意に小さかった。以上より、心筋細胞に存在するKir6.1は虚血・再灌流における心筋保護に重要な役割を果たしている事が明らかとなった。
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