研究概要 |
広範囲なpH領域(5.5-11)で活性を示すシクロデキストリン合成酵素(CGTase)について、pH依存性の変化を示す変異型酵素R227Q-,K232Q-,H327N-,D371N-,R375Q-CGTaseの単独構造、阻害剤アカボース複合体の結晶構造をそれぞれ決定した。このうち、R227Q-,H327N-CGTaseでは、触媒残基側鎖の配向が変化しており、本酵素においてArg227,His327は触媒残基構造を形成することに直接関わり、その構造が広範囲なpH領域での活性維持に重要であることが推定された。そのほかの変異型酵素では触媒残基自体の構造は野生型に比べて変化していなかったことから、Lys232,Asp371,Arg375は触媒残基の構造形成に関わっていないが、静電的に触媒残基のプロトンの解離/結合状態に影響している、と考えられた。 好アルカリ性マルトヘキサオース(G6)生成アミラーゼについて、そのG6複合体とG5複合体の結晶構造を決定した。その結果、G6は結合部位サブサイト-7から-2に結合し、G5はサブサイト-6から-2に結合していることが明らかになった。このことは本酵素が他のα-アミラーゼと異なり、そのような非生産的結合によってG6分解が抑制されていることを示唆している。特にサブサイト-6から-4のLys72,Trp140,Asp166が非生産的結合に重要であると推定された。そこで、Trp140をロイシン、チロシンに置換してそれぞれ活性測定を行ったところ、ロイシン変異はマルトヘキサオース生成が大きく減少し、チロシン変異でも、マルトヘキサオース生成が大きく減少し、マルトペンタオース生成が上昇していた。このことは特定のサブサイトでの芳香族アミノ酸のスタック相互作用によって、生成物がコントロールされていることを示している。
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