研究概要 |
シロイヌナズナの花芽形成に関わる候補物質として単離した新規糖脂質、Arabidopside A, B, CおよびDは、その構造に、ジャスモン酸(JA)関連化合物の生合成中間体であるOPDA、dn-OPDAを含んでいる。 そのため、これまでのジャスモン酸(JA)関連物質の生合成経路のほかに、MGDGなどの糖脂質から脂肪酸が遊離することなく修飾され、OPDAなどに変化した後に遊離、もしくは生合成されたOPDAなどがmonogalactosyl glycerolに結合した状態で一時蓄えられ、必要に応じて放出されるという、新たなJA関連物質の生合成経路の存在が推定された。 これについて明らかにするため、シロイヌナズナの培養細胞を用いて実験を行うことを計画した。まず、理化学研究所より提供を受けた、シロイヌナズナT87細胞を培養し、その中にArabidopside類が含まれているか否かを検討した。しかしながら、幾つかの抽出方法を試したが、培養細胞中からArabidopside類を検出することはできなかった。また、培養細胞を暗黒下に放置するなどしてストレスを与えたが、この方法によっても、Arabidopside類を検出することはできなかった。今後、培地に添加する植物ホルモンの種類や割合を変更することにより、培養細胞がArabidopside類を生成する条件検討を続行する。 また、Arabidopside類の他の生理活性を検討したところ、Arabidopside Aはオートムギのクロロフィルの分解を促進した。Arabidopside類のような糖脂質が葉緑体膜に存在していると推定されていることから、Arabidopside Aが葉の老化に大きく関与している可能性が示唆された。
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