研究概要 |
塩素化ダイオキシン、塩素化ビフェニル(PCB)は高い毒性を示す難分解性の環境汚染物質である。本研究は、白色腐朽菌による高塩素化ダイオキシンおよびビフェニルの分解機構を明らかにすることを目的としたものである。 まず、2,7-dichlorodibenzo-p-dioxin(2,7-diCDD)を分解可能な白色腐朽菌Phlebia lindtneriが、一部の四塩素化ダイオキシン異性体を分解可能であることを示した。一方、2,7-diCDDを分解可能な白色腐朽菌6菌株に対する5.8SrDNA遺伝子の塩基配列に基づいた系統解析により、いずれもPhlebia属に属することを明らかにした。そこで、より分解活性の優れた菌株の選抜のために、類縁の菌に着目したスクリーニングを進めた結果、Phlebia brevisporaを選抜した。本菌は、1,3,6,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(1,3,6,8-tetraCDD)を分解可能であり、水酸化物、メトキシル化物、および3,5-dichlorocatecholへと代謝変換することを明らかにした。さらに、クロロニトロフェン(CNP)製剤を本菌で直接処理し、CNPおよび混在する1,3,6,8-tetraCDDを同時に分解できることを示した。 次に、4,4-dichlorobiphenylは、白色腐朽菌により水酸化を介して4-chlorobenzoic acid、4-chlorobenzyl alcohol、4-chlorobenzaldehydeへと代謝されることを示した。また、P.brevisporaは、毒性の強いコプラナーPCBsを分解可能であり、ビフェニル骨格のメタ位を選択的にメトキシル化し、さらにmono-ortho-PCBsのパラ位の塩素を酸化的に脱塩素化することを明らかにした。
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