研究概要 |
精子形成段階特異的なマーカーをマウスの精巣を使って探索したところ、E-cadherinが基底膜上に接触している平坦な形をした細胞のみで発現していることが分かった。E-cadherin陽性細胞はヘテロクロマチンが存在せず、α6integrin、β1integrin、Ep-CAMを発現していた。精細管のホールマウント抗体染色によりE-cadherin陽性細胞は単独又は少数の細胞がお互いに接触してクラスターを形成しており、そのクラスターの細胞の数は主に2,4,8個であった。これらの結果からE-cadherin陽性細胞は未分化型精祖細胞であることが分かった。未分化型から分化型精祖細胞への転換が起こるステージVII〜VIIIでE-cadherin陽性細胞の大部分がc-Kitを発現し始め、ステージIXになると二重陽性細胞は稀になった。このことからE-cadherinの発現はA_1精祖細胞に分化すると消失することがわかった。精祖幹細胞のマーカーとされているc-RetやGFRα1陽性細胞は全てE-cadherin陽性であり、殆どが単独もしくは2個のE-cadherin陽性細胞で発現していた。またPlzfも全てE-cadherin陽性細胞で発現していた。BrdU取り込み実験からE-cadherin陽性細胞はE-cadherin陰性精祖細胞より細胞周期が非常に長く、busulfanによる精巣の再生実験においてE-cadherin陽性細胞のみが生き残り、その後精子形成が再開されたことから幹細胞の特長を持っていることが分かった。W/W^vマウスにE-cadherin陽性又は陰性細胞を移植したところ、E-cadherin陽性細胞を移植した群のみコロニーを形成したことから精祖幹細胞はE-cadherin陽性細胞の集団に含まれていることが分かった。
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