研究概要 |
リンパ球ホーミングはリンパ球が高内皮性細静脈(HEV)と特異的な相互作用をすることから始まる。この相互作用はリンパ球上のL-セレクチンを介したローリング及び接着、血管外遊走から成る多段階反応である。我々はこれまで、HEVに発現し、ムチン様ドメインとIgドメインを併せ持つ新規膜タンパク質nepmucin(申請時はHev-2の仮称であったが、今回正式に命名)を同定し、リンパ節に発現しているnepmucinがL-セレクチン結合性糖鎖を有することを明らかにした。 今年度、我々はnepmucinが生体内においてL-セレクチンリガンドとして機能するかについて明らかにするために、HEVにおけるL-セレクチン結合性糖鎖の生合成に必要な酵素群(LSST, FucTVII, C1GnT, C2GnT)を導入した細胞株を用いnepmucln/IgGキメラを作製し、このキメラ蛋白質がリンパ球ローリングを媒介するかについて検討した。その結果、nepmucin/IgGは既知のリンパ球ローリングを媒介する分子GlyCAM/IgGと少なくとも同程度に効率よくL-セレクチン依存性ローリングを媒介することが示された。Nepmucinを介したこのローリングはnepmucinのムチン様ドメインを介するが、我々は更にnepmucinがそのIgドメインを介して、L-セレクチン非依存的なリンパ球接着を媒介することを見出した。この接着はPMA等の刺激により亢進した。予備的な結果ではあるが、この接着を阻害する抗nepmucinモノクローナル抗体をマウスに静脈投与したところ、HEVに結合するリンパ球数が減少したことから、HEVに発現するnepmucinはin vivoでリンパ球ホーミングに重要な役割を果たしていることが示唆された。
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