研究課題/領域番号 |
05041005
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
土田 滋 東京大学, 文学部, 教授 (90014505)
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研究分担者 |
清水 純 日本大学, 経済学部, 助教授 (30192610)
笠原 政治 横浜国立大学, 教育学部, 助教授 (70130747)
森口 恒一 静岡大学, 人文学部, 教授 (10145279)
山田 幸広 姫路独協大学, 外国語学部, 教授 (00036659)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
1994年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1993年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
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キーワード | 台湾先住民族 / 高砂族 / 平埔族 / フィリピン / 少数民族 / 伝説 / 漢化 / 民族分類 / サオ語 / サイシヤット語 / イトバヤット語 / ブヌン語 / カラオ語 / バブヤン語 / ルカイ族 / カバラン族 |
研究概要 |
本計画は、言語学的・文化的に密接な関係をもつ台湾およびフィリピンの少数民族のうち、とくに消滅寸前と考えられる言語・文化を、現地調査することによって記録しておこうとするものである。平成5年度・6年度の二年間にわたり調査を行い、次の内容の成果を得た。 1.土田は台湾北部(苗栗県)のサイシヤット語と中部(南投県)の日月潭周囲に行われるサオ語の調査を行い、それぞれ約2千語の語彙項目を収集し得た。いずれも消滅寸前の言語であるが、サオ語は文法も簡単化し、語彙も思い出せない項目が多く、民話などのテキストの収集はほぼ絶望的な状態である。サイシヤット語はサオ語に比べればまだ話し手の人口も多いが、やはり古くからの民話を覚えている年寄りはすでにすべて死亡しており、言語も早晩消えてしまう運命にあることは明かである。 2.山田はフィリピン最北端のイトバヤット語の統語論(焦点化、他動性など)、環境認識の仕方を知る手がかりとして動植物の民族分類、魚名と学名との突き合わせ、民話の分析などを行った。 3.森口は台湾中部(南投県仁愛郷)でブヌン語のテキストの収集を行い、20以上のテキストを録音した。また東部(台東県延平郷)でブヌン語の語彙、文法調査を行った。フィリピンではルソン島北部でKarao語の語彙、文法の調査とテキストの収集を行った。基礎語彙は収集できたが、文法調査ではまだその構造をつかむことができず、またテキスト聞き書きも未完である。カガヤン州バブヤン島でIbatan語の語彙、文法の調査と約30のテキストの収集。平成6年度にはバタネス島とバブヤン島で新しいテキストの採集を行ったのち、ルソン島北部のサン・マリアノ近くのカリンガ族(よく調査されているルソン島中部のカリンガ族とは別物)とミンダナオ島北部のスリガオ語の予備的調査を行った。 4.笠原は台湾南部山地(高雄県)のルカイ族とそれに隣接するサアロア族、プユマ族、パイワン族などの民族間関係に関する口頭伝承を収集し、山地社会の過疎化、伝承者の消失という状況の中で、現在若い世代が、外部からさまざまな媒体で流入する定型的・二次的な知識を自文化の伝承として受け入れつつある傾向を、資料面から明かにするとともに、先住民運動リーダーと彼等の自文化・歴史認識に関する意見交換を行うことができた。 5.清水は台湾東部(宜蘭県、花蓮県)のカヴァラン族の言語使用および民族意識の側面から調査した。民族意識の高まりを背景としてカヴァラン語の教育をしようとする興味深い動きがあり、無文字社会において文字化することの困難と、テキストの文章と実際のカヴァラン語の違いをどうするかなど、多くの問題をかかえることを観察した。また台南県・台東県、花蓮県のシラヤ族およびタガブラン族の阿立祖祭祀および漢化程度の調査を行った。タガブラン族に関しては日本統治時代の戸籍簿の残存状況について調査を行った。また森口と共同して廃棄寸前にあった平埔族の須知簿のコピーを行うことができたのは幸いであったが、その文字化には多大の時間と労力が必要と思われる。
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