研究課題/領域番号 |
05041011
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
桃木 至朗 大阪大学, 文学部, 助教授 (40182183)
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研究分担者 |
NGUYEN Quang ハノイ大学, 歴史学科, 講師
VU Minh Gian ハノイ大学, 歴史学科, 教授
PHAN Dai Doa ハノイ大学, 歴史学科, 教授
PHAN Huy Le ハノイ大学, 歴史学科, 教授
嶋尾 稔 慶応義塾大学, 言語文化研究所, 助手 (90255589)
八尾 隆生 大阪外国語大学, 外国語学部, 助教授 (50212270)
高田 洋子 千葉敬愛短期大学, 国際教養科, 助教授 (50154795)
桜井 由躬雄 東京大学大学院, 人文社会系研究科, 教授 (80115849)
TRAN Ba Chi ハノイ大学, 歴史学科, 助教授
NGUYEN Van C ハノイ大学, 歴史学科, 講師
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
12,500千円 (直接経費: 12,500千円)
1995年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1994年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1993年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | ベトナム / 紅河デルタ農村 / 地簿 / 近世文書 / 合作社 / ゾンホ(宗族) / 村落史 / 紅河デルタ / メコンデルタ / 村落文書 / 農業調査 |
研究概要 |
本研究は、地簿(土地台帳)を中心とする近世・近代文書の調査にフィールドワークを組み合わせ、ベトナム北部の特性の農村の近世以降の歴史を再構成するという新しい試みである。 3年計画の最終年にあたる平成7年度は、前年度に続いて旧ナムディン省バックコック村(現ナムハ-省ヴ-パン県タインロイ村)を中心とする調査研究を行うこととし、夏季に日本側全員が訪越した。ハノイでは桃木・八尾らが漢文字喃研究院、ハノイ大学史学科などで、高田が国立第一文書館などで史料収集を続行、ハ-ナム、タインホア、ゲアンの地簿計80点などを複写依頼した(一部未到着)。 旧バックコック村には本研究の代表・分担者・協力者計9名が赴いたほか、他のプロジェクトで訪越中の日本人研究者や留学生、ベトナム人研究者など20名あまりが一部日程に同行し、調査協力や見学を行った(うち3名を通訳として雇用)。調査は大きく2隊に分かれた。桜井、ヴ-・ミン・ザンらの第1隊は、前年夏に続いて地簿と現在の各地片との対照、農業技術や水利の調査などを進めた。測量もまじえた地簿との対照は、旧バックコック村5部落の中心をなす3部落についてはほぼ終了したが、地簿中の「所」単位の同定はほぼできたものの、一筆単位の同定は革命後の水利建設などの影響で困難な場所が多かった。農業技術、水利については、ヴ-バン県全体の概査もまじえて、冬春作稲の一期作を中心とする1960年代までの状況、60-70年代の大規模な水路とポンプステーション建設による二期作化、80年代以降の小規模水路とポンプによる二期作の安定化、という近現代の変遷の内容が、じゃがいも・野菜などの畑作物の歴史とともに明らかにされた。あわせて、村内の小区画ごとの現在の作付体系の特徴なども精密に調査された。 桃木・八尾・嶋尾とフアン・ダイ・ゾアン・グエン・クアン・ゴックらの第2隊は、農業合作社での聞き取りおよびB部落140戸の全戸聞き取りを試みた(桜井・ザンらも一部参加)。この結果、ブイフイ氏など12宗族を中心とする村内の親族関係・社会組織に関してかなりのデータがえられたほか、農民の経営と生活、貧困家庭の状況、請負制の運用実態と合作社に対する農民の負担など現代の諸問題について、かつてない具体的知識がえられた。家畜・畑作などの副業の意味(現代の農家副業中、最大の現金収入源とされてきた豚は、飼育コストが高く飼育の意味は稲作用の廐肥供給にある、現金収入源としては野菜・果樹やイモ類の方が重要)など、通説を書き換える発見もあった。このほか、高田はナムハ-省に残る仏領期文書の調査収集やバックコックに隣接し、その分村として成立したタンコック村の概査、八尾・嶋尾らは前年に続く祠堂調査などを行い、若干の資料を入手した。 このほか日越それぞれで、初年度以来蓄積された資料の整理・分析が進められ、7年夏の調査結果の基本部分は、ニューズレター(百穀社通信第4号)として公表することができた(前年度調査続報の同通信第3号は現在印刷中)。以上を総合した計画全体の到達点として、近世〜仏領期文書の全容をほぼ明らかにしえたこと、現代の農業技術・経営や合作社の組織と機能などが詳しく掌握されたことの2点が評価される。後者は現代ベトナムの研究に対する大きな貢献でもある。しかしこれらは、特定村落の近世以降の歴史の復元という目標に対しては必要条件でしかなく、予想以上の資料・情報の蓄積は、安直に全体像をまとめることをかえって困難にしている。そこで本研究のメンバーは既収集資料の分析を急ぐとともに、歴史そのものの復元の重要なファクターとして浮上してきたゾンホ(宗族)の組織・機能に関する聞き取り調査の深化など、あらたな現地調査が必要と考え、新たな科学研究費(平成8〜10年度「紅河デルタ村落同族集団に関する歴史社会調査」代表:嶋尾稔)を申請して内定通知を受けている。これにより、旧バックコック村の歴史社会構造を、より深く多面的に解明したい。
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