研究課題/領域番号 |
05041023
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
藤井 知昭 国立民族学博物館, 第2研究部, 副館長教授 (70044740)
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研究分担者 |
AMPHAY Kinda ラオス国立音楽芸術学校, 教授
福岡 正太 国立民族学博物館, 第2研究部, 助手 (70270494)
塚田 誠之 国立民族学博物館, 第2研究部, 助教授 (00207333)
鈴木 道子 中京女子大学, 社会学部, 教授 (80154590)
高橋 昭弘 中京大学, 家政学部, 教授 (10097660)
樋口 昭 埼玉大学, 教育学部, 教授 (60015287)
KINDAVONG Amphay Professor, Laos National Music Institute
高 立士 雲南省民族学院, 副教授
馬場 雄司 同朋大学, 文学部, 講師 (10238230)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
13,000千円 (直接経費: 13,000千円)
1994年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1993年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
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キーワード | マホ-リ / 器楽合奏 / モン・クメール文化 / ラム / カプ / イポック / ラム・ルアン / 北部少数民族 / ルアンプラバン / 低地ラオ / 高地ラオ / アカ(ハニ)族 / 歌謡 / 雲南省 / 北タイ / チベット・ビルマ語系諸族 |
研究概要 |
雲南省はじめ中国西南部諸地域から、少数民族のタイ、ラオス、ミャンマーへの移動は、ほぼこの一世紀のあいだとくに顕著であり、現在もその移動は持続的に続いている。中国のハニ族を中心とするチベット・ビルマ語系諸民族の移動に伴う文化の持続と変容、アイデンティティー保持の実態を、各少数民族の文化的、音楽的特性とその構造を比較研究することを通して明らかにすることを目的として調査を実施した。 平成6年度は、前年度の調査を基本的に継続し、ビエンチャンと北部のルアンプラバーンを中心に補強のための調査を実施した。 前回の調査においては、ラオスの民族構成の実態、音楽を中心とする諸芸能や儀礼の現状、伝統的文化・芸能を支える社会構造と今日的変貌の諸相、およびラオス全体の音楽の構造の概略を把握したが、今回は主としてその音楽の様態の更にディテ-ルについての調査が前進した。 第1に、古典的器楽合奏について、ラオスにおてはその伝統がマホ-リ-という呼称に見られるように、使用楽器の特殊性や合奏の規模などの点で、モン・クメール文化の伝統を継承すると見られる携帯で残されている可能性が明らかになった。この点は、今後タイのピ-パートおよびヴェトナムの古典的器楽合奏等との比較により、よりその実態が更に明らかにされるものと思われる。 第2に、音楽の基層を明らかにする上で最も重要である歌謡の形態・様式について、ラオス全土の歌謡を大きく整理する上での分類概念・大様式を明らかにすることができた。従来、東北タイからラオスにかけて、伝承歌謡の歌い手としてモ-・ラムの存在がよく知られているが、ラオスにおけるモ-・ラムの調査、およびラオス北部の歌謡の調査を通じて、ラオス歌謡の2大様式と見られる、「ラム」と「カプ」の概念=タ-ムを確認することができた。即ち、ラオス中央の山岳地帯を境として、南部地域の伝承的大衆歌謡がラム、北部地域のそれはカプとされる。各々の様式上の特徴が明らかにされたし、またそれぞれのそれはカプとされる。各々の様式上の特徴が明らかにされたし、またそれぞれに地域ごとに特徴を持つ歌謡が含まれるが、それらについてもサンプルは少ないがほぼ概要をつかむことはできた。各地域の歌謡の特徴についてはその一部が明確にされたが、なお今後の調査により、サンプルを増やすとともによりディテ-ルにわたる調査研究が課題である。 第3に、大衆的芸能についても、北部の伝統的人形劇のイポックや南部ビエンチャンを中心とする大衆演劇であるラム・ルアンなど、前回の調査の不明点の解明などで成果をあげることができた。 第4に、少数民族の音楽の調査については、フモン、カム-、タイ、ル-の村落調査などを再度行い前回の調査を補強確認することができたが、新たな対象の調査という点ではなお今後に課題を残している。これまでの調査の継続的主題である中国南部の少数民族との関わりという点からいえば、更にラオス北部国境地域の少数民族の村落調査、更にはヴェトナム北部山岳地域の少数民族の調査を併せて継続することにより一層豊かな成果が期待できるものと考えている。 第5に北タイにおけるタイ系少数民族の継続的調査は、儀礼の調査において一層深化・進行し、今後中国、ラオスとの比較研究を行う上で多くの資料を蓄積することできた。 第6に、数年来継続している中国南西部調査についても、調査が短期にならざるを得ないことや現地の事情により必ずしも捗々しい進展をのぞむことはできない点があるが、南寧、昆明周辺における調査を継続実施することにより、資料の蓄積を図ることができた。 以上のような成果から、今後の課題もより明確になってきている。ラオス北部村落の少数民族のより詳細な音楽の実態の調査と、それを補強するためのラオス北部と関わりの深いヴェトナム北部の調査、そして中国の雲南省周辺の諸地域の調査の一層の進行により、中国雲南省、北タイとを三角形に結ぶこの地域の音楽文化の比較研究の一層の進展が期待できるものと考える。
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