研究課題/領域番号 |
05041034
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
山田 卓生 横浜国立大学, 経済学部, 教授 (00055170)
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研究分担者 |
LIEDES Jukka WIPOベルヌ条約専門家委員会, 議長
FICSOR Mihal WIPO, 事務局長
北村 喜宜 横浜国立大学, 経済学部, 助教授 (20214819)
山中 伸一 横浜国立大学, 国際経済法学研究科, 助教授 (50242384)
三邊 夏雄 横浜国立大学, 国際経済法学研究科, 教授 (50215927)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1993年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
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キーワード | 情報公開 / 企業情報 / 個人情報 / 企業秘密 / 原子力情報 / 環境規制 / 知的財産権 / 情報自由法 |
研究概要 |
1、本研究は、政府機関等に保有されている企業情報について情報公開と企業情報の保護との調整の問題を検討することを目的に、企業情報、個人情報、行政情報のそれぞれの観点、知的財産権保護の観点から研究を行った。 2、山田は企業及び個人情報の公開と保護の観点から研究を行った。人には知られたくない情報をいかにして保護するか。情報である以上誰かに開示するわけであるが、その場合にも別の者には開示しないことを条件とする形をとる。行政目的で政府が企業から集めた情報は、非開示を条件としている。こうした情報について、関心を持つ市民から公開を求め得るかが争いに発展する。アメリカでは、健康、安全等に関する情報開示請求訴訟があり、これらについて分析検討した。企業に私的な情報があり得るか、政府の保有する情報はパブリックなものという考え方について検討を加えた。イギリスでは政府情報へのアクセスは制限付きであり、ドイツでは個人データの保護という視点が強い。オーストラリアでは、政府が集積した個人に関する情報(年金、保険等)を自己情報を知りたいとする個人からの開示請求が問題となっており、情報開示に積極的な動向について分析、検討した。 3、研究分担者のうち三邊は、原子力の平和利用に関する行政情報の国民への公開がどのように扱われているかを研究した。スウェーデンは行政情報公開について世界で最古の歴史をもち(1766年プレス自由法)、数度の改正を経て今日に至っているが、企業秘密とされる情報及び国家機密に係わる場合には非公開とされている。また、1980年6月の国会決議により2010年までに原子力発電所の段階的廃棄政策をとったが、現在その再検討がなされている。政府は原子力情報のかなりな部分を積極的に公開し、原子力利用に懐疑的な団体にも原子力プログラムへの参加を求める姿勢をとっており、本法により原子力公開を請求する事例は殆どなく裁判例もない。イギリスでは行政情報の公開は一義的に議会に対し行われることとされ情報公開法は制定されていない。イギリスでは情報公開制度と原子力情報の保護という緊張関係は見られず、個別的立地等についての公聴会の在り方が問題となっている。 4、研究分担者のうち山中は、財産的情報の国際的保護の在り方について、知的財産権の法的保護に関する国際機関であるWIPO(世界知的所有権機関)と協力し研究を行った。WIPOでは現在、科学技術の進歩に対応した財産的情報の保護の在り方の検討を行っており、1993年6月、7月に2回の専門家会議を開催した。山中はこれらの専門家会議に出席し、研究分担者であるフッショールWIPO事務局長及びリーデス専門家会議議長とともに研究を行った。先進国間の先端技術関連知的財産権のハ-モナイズ、開発途上国の知的財産権保護レベルの向上が課題となっている。ECでは市場統合に必要な知的財産権保護のハ-モナイズが積極的に行われており、コンピュータ・プログラム、衛星放送及び有線放送、著作権の保護期間等の指令が作成され、データベースの指令の検討も進んでいる。 5、研究分担者のうち北村は、環境規制に関する行政情報がどのように扱われているかを分析した。アメリカにおいては、連邦レベルでは、情報自由法の下で、排水許可の許可証や環境法規の遵守情報が原則として公開されている。実際には、環境団体などがそれを活用して厳格な執行を目指し訴法を提起することも多い。オーストラリアでも環境法規の実施に関連する情報をどのように扱うべきかについては19世紀から議論があった。企業秘密を理由に開示には消極的意見が大勢を占めていたが、1970年代に入り、行政のみに執行を任せていたのでは適切な結果が必ずしも得られない、環境リスクに関する情報を与えた上で個人に行動の選択をさせるべきだといった考え方が企業秘密論を凌駕するようになり、個別実体環境法の中で情報公開規定が整備されるようになってきた。国家の安全や営業上の秘密といったセーフガードはついているが、これらは限定的に解されている。
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