研究課題/領域番号 |
05041044
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 国際大学 |
研究代表者 |
黒田 壽郎 国際大学, 大学院・国際関係学研究科, 教授 (90051309)
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研究分担者 |
櫻井 秀子 国際大学, 中東研究所, (講師)研究員 (60203345)
黒田 美代子 駒沢女子大学, 人文学部, 助教授 (80277897)
真田 芳憲 中央大学, 法学部, 教授 (50055167)
寺尾 誠 慶応義塾大学, 経済学部, 教授 (30051189)
湯浅 赳男 新潟大学, 経済学部, 教授 (00018095)
ハーリド マーグート アレッポ大学, 伝統科学研究所, 所長
MAGHOUT Khaled Institute for the History of Arabic Science Aleppo University
ABDUS Samad 国際大学, 中東研究所, 講師研究員 (80212538)
奥田 敦 国際大学, 中東研究所, 助手研究員 (50224150)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
22,000千円 (直接経費: 22,000千円)
1995年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1994年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1993年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
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キーワード | 伝統経済 / ス-ク / シリア / アレッポ / イスラーム経済 / 商人 / 職人組合 / 商業 / 職人 |
研究概要 |
本年度は、(1)シリアにおける現地調査、(2)シリアの研究分担者、協力者の日本への招聘、といったプログラムを柱として研究活動を行った。 (1)においては、過去2年間の小ハーンを中心とするス-クの調査に加えて、私的部門の製造業の調査を行うために、アレッポの伝統産業である石鹸工場、近代的設備の衣料工場、プラスティック工場の調査に着手した。企業形態、経営者の位置づけ、職人を中心とする組織形態、雇用形態と契約、取引形態、ス-クとの関係、自由化政策の影響などの具体的項目について聞き取り調査を行った。これらの工場の生産の現場はいずれも、熟練職人を頂点とする組織で構成され、経営者も生産技術に精通し直接生産に関わり、近代的な意味に置ける所有と経営の分離は認められなかった。当然のことながら企業家精神は旺盛であり、経営者自らの意志決定が経営の重要な位置を占めている。さらに規模の経済ではなく、範囲の経済を追求する中小、零細企業戦略がみられ、買手の多様なニーズに応じる多品種少量生産が行なわれている。とりわけ社会主義国のシリアにおいては、国営企業の画一的生産に対して私的部門の個別的生産が、補完的役割を果たしているとも言える。このように製造部門においてもス-ク商人と同様、直接性の重視する経営方針が窺われ、本研究において一貫して追求しているイスラーム経済理論の実証的側面が製造部門においても見い出された。とりわけ伝統産業は工場自体がス-クの中に位置しており、経営者=職人=商人といった、スッワークの多様能性が顕著にあらわれた例と考えられる。 (2)においては、11月に研究分担者のK.マ-グ-ト、研究協力者のN.スッカルの両氏を日本へ招聘し、本研究の総括、成果発表を目的としたセミナーを二週間にわたって各地(東京、新潟、京都、大阪、神奈川)で開催した。セミナーにおいては、現代シリア経済の伝統的側面と政策的側面の双方に焦点を当て、今後の国際関係の中でのシリア経済の位置づけ、政策の特徴、伝統的経済の役割と機能、両者の連属性などが討議された。セミナーは一般に公開したが、専門の研究者をはじめとする参加者と充実した論議を交わされた。 本研究の特色としてここに改めて特筆すべき点としては、理論の研究をふまえながら伝統経済の実態調査と実施したことであり、このような理論的基礎は調査内容に、既存の研究には見られないユニークで的確な視座を与えた。研究代表者が初年度から二年間にかけて行ったM.バ-キルッ=サドルの『イスラーム経済論』、『イスラーム哲学』、『無利子銀行論』の翻訳と解説は、伝統経済の理論的構造を明かにし、調査結果を分析しス-クの構造を理解する際に極めて重要な役割を果たした。またス-クの歴史的、理論的、実証的な側面の分析は、分担者の黒田美代子氏の『商人たちの共和国-世界最古のス-ク、アレッポ』にまとめられ出版された。さらに本研究を発展されるために、研究調査領域を地中海にまで拡大する予定であるが、この際にはイスラーム圏で〓〓性をもつイスラーム法が歴史的にス-ク経済にいかに適用されたかをふまえることは不可欠であり、この点に鑑みて研究代表者は、H.ガーバー著『イスラームの国家・社会・法-比較の視点によるオスマーン法の歴史人類学』の翻訳、解説を終え、近々刊行予定である。 三年間にわたる本研究は、実体経済としては重要な役割を果たしながらも、国民経済の陰となって光を当てられることのなかったス-ク経済という未開拓の研究領域に属するものであったが、綿密な計画に基づいて理論構築と現地調査を同時に進行させることにより、アレッポのス-クを中心とする伝統経済の機能と構造が明かにされた。今後は本研究のさらなる発展のために、調査対象地域を拡大して、伝統経済のもつ経済システムとして側面をより一層明確にする必要がある。したがって次なる研究は、地中海商業都市に照準を当てヨーロッパの近代経済システムにも劣らぬ経済システムの解明に努める予定である。
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