研究課題/領域番号 |
05041047
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
中田 照子 愛知県立大学, 文学部, 教授 (70086180)
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研究分担者 |
森田 明美 東洋大学, 社会学部, 助教授 (70182235)
杉本 貴代栄 長野県短期大学, 教養学科, 助教授 (20206428)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
13,500千円 (直接経費: 13,500千円)
1995年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1994年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1993年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
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キーワード | 女性世帯 / シングルマザ- / 母子福祉 / 母子世帯 / 母子世帯の自立 / 母子世帯の職業教育 / 児童扶養手当 / 生活保護 / AFDC / 女性福祉 / 児童福祉 / 女性問題 / 保育問題 / 女性労働 |
研究概要 |
「貧困化する『女性世帯』への社会福祉援助をめぐる日米比較研究」(1993年度〜1995年度)は、これに先立つ1987年度〜1989年度に行った文部省科学研究費助成による「共働き世帯における養育制度とその費用負担に関する日米比較研究」の継続研究として行ったものである。つまり、「共働き世帯」研究において、構造的性差別社会にあっては、女性が主たる生計者である「女性世帯」に生活上の諸問題が集約的に現れることが明らかになった。そこで、本研究では、それらの「女性世帯」が自立するための社会福祉的援助のあり方を明らかにすることを目的として研究に着手した。また、この調査は、フェミニストリサーチの立場に立って行った。 〔アメリカ調査〕アメリカでは、近年、「女性世帯」が急増し、なかんずく、社会福祉受給者の多くを占める「貧困の女性化」現象を呈している。構造的性差別社会においては、「女性世帯」は男性とは異なる労働・生活上の諸問題を抱えており、その解決のためには、男性とは異なる社会福祉援助を必要としている。〈調査の時期と場所〉1993年度・1994年度の夏に、ミシガン州デトロイト市及びその周辺地帯において面接調査を行った。同地域は、自動車産業を中心とした工業地域であり、中高級住宅地もあるものの、工業地域にはワーキング・クラスまたは比較的貧困層が集中し、そのための公私の援助サービスが各種試みられている地域である。1993年度には自立している15ケースの「女性世帯」を、1994年度には公的援助を受けている(受けていた)「女性世帯」36ケースの面接調査を行った。〈調査の結果〉「女性世帯」への援助の種類を(1)公的援助か私的援助か、(2)全面的援助か部分的援助かに分けることができる。(1)については、公的援助:収入援助(AFDC、住宅費補助、フードスタンプ、医療補助、WIC-食料補助)、就学援助(フリーランチ、ヘッドスタート、奨学金・授業料軽減、相談プログラム)、就業援助(職業訓練、保育料補助、ラッチキ-・プログラム)、私的援助:Focus Hope(食料援助プログラム)、職業訓練、カウンセリングがあげられた。援助を受けている調査対象者の多くは、公的援助を中心として、私的援助を従として受給している。(2)については、28ケースが全面的援助を受けていた(26ケースがAFDCを受給し、4ケースが遺族年金また
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は障害年金を受給していた-併給が2ケースあるため、計28ケースとなる)部分的援助を受けているケースは、13ケースである。子どもがフリーランチを受けている9ケース、フードスタンプを受けている4ケースである。また、公営住宅・公私の職業訓練機関の対象者はその全員が、成人教育センターでは11人中10人が、全面的援助を受けていた。それに引換え、保育所では7人中3人が、その他(大学図書館)では4人中4人が部分的な援助のみを受けていた。 〔日本調査〕アメリカ調査と比較することを考慮して、「一般的」な都市部とその周辺における社会福祉問題が顕在化する地域ということから名古屋市及びその周辺地域から調査対象者を選んだ。調査対象者は、1994年度・1995年度にかけて、公私の福祉的援助を受けて(受けていた)母子で暮らしている「女性世帯」42ケースに面接調査を行った。〈調査の時期と場所〉調査対象者は、「女性世帯」になった原因別(死別・離婚・非婚・別居)と、職種と受けている社会福祉的援助などから、それぞれの条件をあわせもつ「女性世帯」を各3ケース程度サンプリングすることを目標に援助機関を選定した。選定した援助機関は、公的:(1)福祉事務所、(2)母子寮、(3)婦人保護施設、(4)保育所(昼間・夜間)(5)公営住宅、(6)職業訓練校である。〈調査の結果〉日本の「女性世帯」への援助の必要性は「女性世帯」になった原因や、なってからの年数・世帯構成によって大きく異なっている。そうであるがゆえに、原因別に、その受けている援助とその効果を考えてみなければならない。対象者の原因別ケース数は、死別4ケース、非婚5ケース、別居5ケース、離婚28ケースである。死別では、夫の家族との関係によって、遺族年金が受給できるかどうかに加えて、住宅の形態、仕事の有無が暮らしを大きく規定している。離婚では、対象者のほとんどが、子どもを連れて家を出て夫から身を隠す形や、話し合いがつかないまま家から出てきており、別居中の問題が大きい。つまり、離婚が成立するまでの所得の問題、保険がない(自分も子どもも夫の被扶養者となっている)ための医療保障の問題なども課題である。非婚の場合は、経済的にも、精神的にも、肉体的にも厳しいが、友人や知人の援助で「女性世帯」として生活していく覚悟と準備をしているケースが多い。 〔まとめ〕「女性世帯」の自立を促し、「貧困の女性化」を防止するためには、女性のおかれている状況とそれが依って立っているジェンダー・システムを考慮に入れた社会福祉援助が行われなければならない。日米双方ともに、親子二代にわたるAFDC及び生活保護受給者がみられたことは、これまでの社会福祉援助が「女性の貧困のサイクル」を断ち切る有効な手だてとはなり得ていないといえる。その理由としては、「女性世帯」が働きながら子育てができる公的な子育て援助システムやサービスが不備であることがあげられる。「女性世帯」が「自立」的に暮らすためには、子どもの保育を、誰が、どこで、どのように援助してくれるかによって、大きく就労場所や条件が異なる。子育て支援システムについてみると、日本の制度も不十分ではあるが、アメリカの方が、公的な保育政策及び有給の出産休暇や育児休業が不備であるといえる。しかし、「女性世帯」の長期の「自立」を展望する職業訓練及び各種教育プログラム・コミュニティー・カレッジでの授業料減免制度・大学の仕事をしながら学ぶことのできる制度などの施策は、専門的な職業につく希望を与え、有効なものとなっている。この点に関してみると、日本の「女性世帯」の「自立」にとって、母親の労働力の価値を高める資格取得という教育訓練の場の提供とそこに参加できるような援助体制はまだまだ不十分である。 隠す
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