研究課題/領域番号 |
05041053
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
脇田 宏 東京大学, 理学部, 教授 (40011689)
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研究分担者 |
陳 践発 中国科学院, 蘭州地質研究所, 研究員
徐 永昌 中国科学院, 蘭州地質研究所, 教授
王 先彬 中国科学院, 蘭州地質研究所, 教授
五十嵐 丈二 広島大学, 理学部, 助教授 (00202854)
中井 俊一 東京大学, 理学部, 助手 (50188869)
WANG Xianbin Lanzhou Inst. of Geology. Professor
XU Yongchang Lanzhou Inst. of Geology. Professor
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1993年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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キーワード | ヘリウム同位体比 / 大陸下マントル / 中国 / 天然ガス / 温泉ガス / 地熱地帯 / 熱源 / 断裂帯 |
研究概要 |
この国際学術研究で、中国南部雲南省の騰衡地熱地帯の温泉ガス・温泉水試料、火成岩岩石試料を入手し、中国東北部の温泉ガス・天然ガス試料を採取した。 雲南省騰衡地熱地帯については以下のことが明らかになった。 この地熱地帯はプレート衝突地域に位置し、大断裂が発達している。地熱活動は騰衡付近のクレーター様の地形付近と周囲の断層に沿ってに分布している。本研究では、これらの地形の特徴と地下のマグマの分布がどう結びついているかを明らかにすることと、大陸下部のマントルの化学的性質を明らかにすることを主な目的とした。 1.温泉ガスのヘリウム同位体比測定から、地熱活動の熱源が環状構造下のマグマであることがわかった。環状構造周囲の温泉ガス中のヘリウムはマグマ起源のヘリウム-3を相対的に多く含んでいる。環状構造下部にマグマが存在する可能性は、地震の震源分布など地球物理学的観測により示唆されていたが、われわれの実験によりこれが裏付けられた。 2.この地域のマントルは、沈み込み帯などのマントルよりも、低いヘリウム同位体比を持つ可能性が大きい。温泉ガスのヘリウム-3とヘリウム-4の比は、大気の5倍程度である。中央海嶺性玄武岩を産み出すマントルでは約8倍、日本などの沈み込み帯名マントルでは約7倍の値が報告されている。この地域のマントルが、衝突前の沈み込みや大陸の衝突により変質作用を受けた可能性は、火山岩のネオジム・ストロンチウム同位体比から示唆されてきたが、われわれのヘリウム同位体比の測定結果はこれを支持する。 3.この地域に多数存在する単成火山の噴出物のK-Ar年代測定の結果、火成活動はごく最近まで続いていることが明らかになった。 本研究では大陸下部のマントルの性質をさらに明らかにするために、中国東北地域の地熱地帯、天然ガス井地域を調査し、温泉ガス・天然ガス試料を採取または中国側研究者から入手した。またこの地域での地震観測施設を訪問し、現地の観測者との意見の交換を行った。この地域の調査からは以下のことが明らかになった。 1.黒龍江省北部の五大連池は第四紀の火成活動が盛んで、200年前にも噴火活動があった地域である。この地域を調査し、湧水から放出されるガスに含まれるヘリウムを分析し、マグマ起源のヘリウム-3に富むことを確認した。ヘリウム-3とヘリウム-4の同位体比は大気の約4倍であった。 2.遼寧省の温泉ガス試料はヘリウム-3に乏しい。この地域の地熱地帯の熱源はウラン・トリウムなど花崗岩中の放射性元素と考えられる。 3.中国東北部には〓〓断裂帯と呼ばれる大断層が南北に走っている。この周囲の天然ガス井の試料を入手した。その結果、天然ガス試料はヘリウム-3に富みこの断層がマントルからの揮発性物質の通り道となっていることが明らかになった。ヘリウム同位体比の最高値は大気の約4倍である。 4.天然ガス試料の一部は大気成分による汚染が非常に少ないことがわかった。今後ヘリウム以外の希ガスの同位体比測定を行う。大陸内での気体試料でネオン・アルゴンに同位体比異常が見られた例は非常に少ないが、今回入手した天然ガス試料はこれらの異常が期待できる。もし異常が認められれば、大陸下部のマントルの進化に関しての重要な制約をつけることができると考えられる。 ヘリウム同位体比測定の終了した94年の1月に中国側の研究者を招聘し、結果の検討を行った。
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