研究課題/領域番号 |
05041055
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 利紘 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (70011616)
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研究分担者 |
木山 喜隆 新潟大学, 理学部, 助手 (50018272)
田口 真 東北大学, 理学部, 助手 (70236404)
岡野 章一 国立極地研究所, 教授 (10004483)
福西 浩 東北大学, 理学部, 教授 (90099937)
北 和之 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (30221914)
岩上 直幹 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (30143374)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
1995年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1994年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1993年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | 赤道異常帯 / 大気光 / 電離圏F領域 / 熱圏 |
研究概要 |
この研究は、太陽地球系エネルギー国際協同研究計画(STEP)の研究領域のひとつである。「電離圏・熱圏結合系のエネルギーと力学」の研究の一環として行ったものであり、磁気赤道をはさんだ地磁気緯度±15度の帯状域においてF領域電子密度が異常に高い、いわゆる赤道異常におけるF領域プラズマの微細構造とダイナミックスの研究を対象とするものである。電子が酸素分子イオンと再結合反応を起こす際に発生する酸素原子630ナノメートル大気光を光学的リモートセンシングの手法によって測定し、F領域電子密度の空間的微細構造と熱圏気温・風系の時間変動を調べた。同時に、下部熱圏に由来するOH大気光の全天強度分布を測定し、F領域プラズマ不安定性に対する駆動源に関する重要な手がかりを得た。 赤道異常帯の観測点として、赤道異常の北側帯に当たるハワイのマウイ島ハレアカラ山頂と、南側帯に当たるインドネシアのジャワ島東部ワトゥコセッの2点を選んだ。ハレアカラ山頂における観測は、1993年の2月および1993年、1994年、1995年の11月、新月をはさんだ約3週間にわたって実施した。観測に使用した測定器は高速全天掃天式大気光測定器、大気光単色全天撮像器、および酸素原子630ナノメートル輝線の撮像型ファブリ・ペロ-干渉計であり、これらによって酸素原子大気光の全天強度分布および輝線の線幅と波長偏位の天空分布を測定した。これによって、F領域電子密度の全天分布(水平微細構造)と熱圏気温・風系を求めた。また、下部熱圏起源の大気光である酸素原子557.7ナノメートル、ナトリウム原子589.3ナノメートル輝線およびOH分子回転帯の大気光についても強度の全天分布を測定したので、赤道異常帯におけうF領域プラズマの擾乱と下部熱圏との相関を調べることができた。 ワトゥコセッにおける観測は、大気光測定器を現地に恒常的に設置して行うこととし、観測は現地技術者に依頼することにした。使用した大気光測定器は東西方向走査式の多色測光器で、酸素原子630ナノメートル輝線のほか、酸素原子557.7ナノメートルとOH分子大気光を測定した。この測光器は、ハレアカラ山頂で使用したものより性能は低いものであったが、時々発生する東西方向の大気光の縞構造を検出することができ、これによって赤道異常の南側帯と北側帯におけるF領域プラズマの挙動を比較研究することができた。しかしながら、高温・高湿による測定器の故障と曇りがちの天候のため、観測はしばしば中断した。測定器の故障に対しては何度か現地に赴いて修理を行ったが、残念ながらこのプロジェクトの後半では良好な観測データはほとんど得られなかった。 ハレアカラの観測においては、特に磁気嵐時のF領域電子密度の全天水平分布の変動パターンは、下部熱圏大気の波動擾乱とは無関係であることが明らかとなった。これはF領域の変動が下層大気に起因しないことを示唆している。また、ワトゥコセッで時折り観測されたF領域電子密度の縞構造に対応する変動は下部熱圏起源の大気光には見られないことから、これらの縞構造は下層大気の波動擾乱によるものではないことが明らかとなった。 本研究において得られた重要な結論は、電離圏F領域の赤道異常帯の微細構造に見られる擾乱は、直下の下層大気の波動に起因するというより、極域ないしはプラズマ圏全域におけるプラズマ擾乱の結果を反映している、ということである。
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