研究分担者 |
BAUTISTA Bar フィリピン火山地震研究所, 地震研究部主任
PUNONGBAVAN レイムンド フィリピン火山地震研究所, 所長
尾池 和夫 京都大学, 理学部, 教授 (40027248)
巽 好幸 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (40171722)
西上 欽也 京都大学, 防災研究所, 助手 (00189276)
大倉 敬宏 京都大学, 総合人間学部, 助手 (40233077)
渋谷 拓郎 京都大学, 防災研究所, 助手 (70187417)
PUNONGBAYAN Raymund Philippine Institute of Volcanology and Seismology
BART Bautist フィリピン火山地震研究所, 地震研究部, 主任
RAYMUND Puno フィリピン火山地震研究所, 所長
伊藤 潔 京都大学, 防災研究所, 助教授 (80022721)
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研究概要 |
フィリピン・ルソン島の地殻活動は現在極めて活発である。1990年7月にフィリピン地震が発生,翌年6月には今世紀最大といわれるピナツボ火山大噴火が起きた。しかも時期も前後して,マニラの南60kmにあるタール火山の地震活動が活発になった。タール火山は1965年に水蒸気爆発を起こし,タール湖周辺の住民数百名が死亡した。その後、数回の火山・地震活動が活発になったが,大噴火を起こすに至っていない。ところが,活動は断続的に継続し,1991年3月,1994年3月にはタール火山島の住民に避難命令が出ている。このような中で,タール火山の噴火予知のためには,火山構造の調査が欠かせないことが明らかになった。マグマ溜りの位置,大きさ,ベントの位置,さらに深部のマグマ供給源の位置,その形態を知ることは,タール火山の噴火予知,災害防止,調査研究立案にとって極めて重要なものと思われる。 昨年度より,タール火山の構造調査のために,人工震源を用いた構造調査が開始された。昨年度は,タール火山湖の周囲に臨時地震観測点を配置し,人工震源として50mの深さの孔内にダイナマイト300kgを入れて爆発させ,伝播する波を観測することにより,地下構造の推定を行った。解析の結果,現在のカルデル湖内火山島の中心部の下に,地震波の減衰域が存在することが明らかになった。さらにP波の後続波として,深さ10km付近で反射してきたと思われる反射波も検出された。マグマ溜りは,この反射面つまり部分溶融面から供給されたものと考えられる。 本年度は,上記で得られた構造をさらに確かめるためにタール火山カルデル湖周辺での重力測定,火山岩石学的調査,自然地震と人工震源を用いた火山構造調査を実施した。以下に簡単に記述する。 (1)重力測定 タール湖および周辺の地殻構造測定のため,湖周辺の200点で重力測定を実施した。位置はGPSの単独測位と地図を基に確認し,高度な湖面からの高さを水準測量によって測定した。高さの精度は数cmと推定される。重力測定は,ラコステ重力計を用いて行われた。測定精度は数マイクロガルである。現在はこれらのデータの解析中であるが,昨年度に得られた結果と調和的であることが確認された。また、すでに横山他が重力調査を行っているが,それらの結果とも一致しており,さらに詳しい結果が得られていると言うべきであろう。 (2)火山岩石学的調査 タール火山はピナツボを含む火山列に属し,マニラ海溝からの沈み込みに伴う弧状列島型の火山と考えられる。しかしながら,タール火山から南へ向かうと火山列は東西に並び種々の点で弧状列島の火山群と異なる配列をなす。これらの配列は引張力の下で形成されたとの考えもある。このような点から,岩石学的に分析・調査を行うことが必要とされる。タール火山および周辺域の多数点でサンプリングを行い,現在分析中である。 (3)自然地震のアレイ地震観測 タール湖内の地震活動は現在低下しているものの,地震波源としては極めて重要なものである。今年度は特に火山島下の反射面の精度良い検出を目的として小スパンのアレイ観測を実施した。1月中旬より3月上旬までの50数日にわたり,トリガー方式で収録を進めた。収録されたイベントは2000個にのぼったが,地震と思われるものは小数である。現在解析が進められている。 (4)人工地震観測 タール火山島南西の湖岸に深さ7mのボーリング孔を6本堀り,それぞれにダイナマイト30kgを入れ,同時に爆発させ,地震波を収録した。地震記録は,北岸のピラピラソ-,および北東岸の臨時小スパンアレイ,フィリピン・フランス共同の常設テレメータ観測点のすべてで明瞭な波形が収録された。現在これらのデータの解析が進められている。予備的な解析結果では,明瞭な反射波が得られていないようであり,今後の検討が急がれている。 上記のように,昨年度と今年度の観測と調査に基づく成果は当初の目的を達成し,今後の発展へつなぐものとなったと結論できる。
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