研究課題/領域番号 |
05041068
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 国立科学博物館 |
研究代表者 |
加瀬 友喜 国立科学博物館, 地学研究部, 室長 (20124183)
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研究分担者 |
小玉 一人 高知大学, 理学部, 助教授 (00153560)
重田 康成 国立科学博物館, 地学研究部, 研究員 (30270408)
岡本 隆 愛媛大学, 理学部, 講師 (30201990)
二上 政夫 川村学園女子大学, 一般教育, 助教授 (50211529)
前田 晴良 京都大学, 理学部, 助手 (10181588)
植村 和彦 国立科学博物館, 地学研究部, 室長 (50000138)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
16,000千円 (直接経費: 16,000千円)
1994年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1993年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
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キーワード | 古生物学 / 古地磁気学 / 白亜紀 / アンモナイト / K-T境界 / C-T境界 / サハリン / 化石層序 / 生層序 / 古地理 |
研究概要 |
研究実績報告 1.平成6年度は、サハリン州マカロフおよびシネゴルスク地域を中心に調査をおこなった。調査にあたっては、それぞれの地域で本研究の目的に合ったルート(ビクトリア川流域、スズヤ川流域)を選定し、約50日間にわたって詳細なルートマップの作成、化石の連続的な採取、古地磁気測定用試料の採取をおこなった。 2.マカロフ川流域には、サントニアン階からマストリヒシアン階にわたる連続層序が確認され、下位のプイコフ層(北海道の上部蝦夷層群上部に相当する)には4つの化石群で特徴づけられる群集が認められ、上部のクラスノヤルカ層(北海道の函淵層群に相当する)には3つの化石群で特徴づけられる群集が認められた。カンパニアン階上部からマストリヒシアン階の幾つかの層準に、日本列島の白亜系で知られている特異な化石群(例えば稚内の宗谷ファウナや淡路島の和泉層群のファウナ)と同じ内容のものが確認され、今後の日本とサハリン地域の生物相の比較する上で重要な発見となった。 3.マカロフ地域では白亜系と古第三系の接触関係は直接示す露頭はなかった。いることが分かり、白亜紀・第三紀境界は存在しないことが明らかとなった。また、この地域にはサントニアン階より下位の地層の分布がないことがわかった。 4.古地磁気学的研究は現在進行中であるが、これまでの測定結果から、サハリン地域では白亜紀末期から古第三紀に反時計回りに、それ以降後期中新世なで連続的な時計回りの回転運動があったことがわかりつつある。 研究成果の概要 本研究では、戦前日本人研究者によって調査され、その後ロシア共和国の研究者によって引き続き研究されているサハリン南部の白亜系を、北海道や日本の他の白亜系との関連で調査をおこなった。 1.ナイバ川流域およびアイ川流域には、アルビアン階からマストリヒチアン階にわたる連続層序が確認され、4累層を区別した。アイ層上部とナイバ層下半は、平行葉理の発達した黒色泥岩を主体とし、生痕や大型化石にきわめて乏しい。おそらく、白亜紀中期に発達した海洋無酸素事変の影響下で堆積したものと考えられる。ブイコフ層下部は、Planolitesを含む泥岩や青灰色縞状泥岩、主部は生物攪乱を強くうけた泥岩で特徴ずけられ、後者からは豊富なアンモナイト類やイノセラムス類を産する。クラスノヤルカ層は、火山岩片質の砂質層が多くはさまれ、やや砂質の泥岩で特徴づけられる
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。古地磁気学的研究によると、ブイコフ層上部はサントニアン層に、クラスノヤルカ層最下部はカンパニアン階に対比できる。これはアンモナイトやイノセラムス類による対比と矛盾しない。クラスノヤルカ層中には、カンパニアン階からマストリヒチアン階までの3つの化石群が認められた。このうち、カンパニアン階上部の化石群(Canadoceras multicostatum群集)は稚内の宗谷ファウナと、またマストリヒチアン階の化石群(Zelandites varuna群集)は淡路島の和泉層群のファウナと同じ内容のものが確認された。アンモナイトが産出しなくなってから古第三系に不整合で覆われるまでの間(クラスノヤルカ層最上部)には、厚さ200〜300mにわたって砂質泥岩が堆積している。時代対比に有効な化石は発見できなかったが、ダニアンを含む可能性もあり、古地磁気学的研究を進めている。 2.シネゴルスク地域では、サントニアン階からマストリヒチアン階にわたる連続層序が確認され、ナイバ地域と同様の層序と化石群を認めた。また、クラスノヤルカ層最下部(Inoceramus schmidti帯最下部)に豊富な化石群を認めた。 3.マカロフ川流域には、サントニアン階からマストリヒシアン階にわたる連続層序が確認され、2塁層を区別した、下位のブイコフ層は、生物攪乱を強く受けた暗灰色の塊状泥岩よりなり、4つの化石群が認められた。古地磁気学的研究によると、下位のAnapachydiscus sutneri群衆とA.naumani-Inoceramus orientale群集はサントニアン階に、上位のEupachydiscus haradai-I-shmidti群衆とCanadoceras kossmati群衆はカンパニアン階に対比できた。これは、大型化石による対比と矛盾しない。Inoceramus schmidtiは、ナイバ地域やシネゴルスク地域ではクラスノヤルカ層下部より産出するが、マカロフ地域ではブイコフ層上部より産出し、岩相と化石帯の斜交が認められた。クラスノヤルカ層は、安山岩質の火山岩片に富む緑色砂岩、砂質泥岩、砂岩泥岩互層よりなり、3つの化石群が認められた。下位のCanadoceras multicostatum群集は宗谷ファウナと同じ内容のものであり、ナイバ地域においても全く同じ化石群が産する。Inoceramus hetonaiaus群集および最上部にPachydiscus cf.flexuosus群集が認められた。後者の群集は、約50km南のプガチェヴォ地域においても確認できた。北海道では断片的にしかわからなかったマストリヒチアン階の化石群の産出順序や内容が一つのルート内で確認でき、化石層序的に重要な発見となった。向斜構造のためクラスノヤルカ層の上限は不明であるが、アンモナイトが産出しなくなってからさらに500m以上の厚さの地層が堆積している。時代対比に有効な化石は発見できなかったが、ダニアンを含む可能性もあり、。古地磁気学的研究を進めている。ロシアの研究者はクラスノヤルカ層の最上部に古第三紀最初期のダニアン階を認めているが、今後北海道根室地域の根室層群の生物相との比較する必要が出てきた。仮にロシアの研究者の見解が正しいとしても、白亜紀・古第三紀境界の重大な事変を示すような証拠は、ナイバ地域では見られなかった。 隠す
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