研究課題/領域番号 |
05041085
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岡田 典弘 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (60132982)
|
研究分担者 |
岡崎 登志夫 国立養殖研究所, 遺伝育種部, 室長
実吉 峯郎 西東京科学大学, バイオサイエンス学科, 教授 (20002339)
|
研究期間 (年度) |
1993
|
研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
|
配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1993年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
|
キーワード | シロサケ / カラフトマス / 多型 / レトロポゾン / ロシア / カムチャッカ / SINE / アムール川 |
研究概要 |
現在、北太平洋で捕獲されているシロサケは、日本・ロシア・米国のいずれに回帰するサケなのかわからない状態で捕獲されていると考えられる。ミトコンドリアを用いた方法、血液の分析等で、どこの国由来のサケなのかの検定が試みられているが、決定的ではないと考えられる。我々は、最近集団の構造やサケ科魚類の進化を調べる為の従来の方法とは全く異なった新しい技法を開発することに成功した。これはレトロポゾンのDNA中への挿入を指標とするもので、PCR法を用いて、ゲノム中に一カ所しかないその箇所にレトロポゾンが挿入しているか否かを検定するものである。この技術を用い、SmaIファミリーという我々の分析しているレトロポゾンの挿入の有無を検定することにより、ロシアに生息するシロサケ・カラフトマスの集団の特異性を決定することが可能である。この技法を用いてロシアにおけるシロサケ集団の特異性を決定することができれば、その成果はきわめて大きいと考えられる。実際、我々はカムチャッカ半島の太平洋側、及びオホーツク海側にそそぐ河川、さらにアムール川流域から数多くのシロサケ・カラフトマスのサンプルを採集し、PCR法を用いて、様々な遺伝子座に関しレトロポゾンの挿入多型を調べた。その結果、シロサケにおいては、レトロポゾンの挿入は、多型状態であることが判明した。この結果とこれまでの研究によるアメリカ・カナダのシロサケでの結果を比較したところ、ロシアの河川に遡上するシロサケにおいて、いくつかの遺伝子座における頻度が、アメリカ・カナダのものと大きく異なっていた。これらの遺伝子座がロシアの河川に遡上するシロサケと、アメリカ・カナダの河川に遡上するシロサケとを区別できるマーカーになりうることが確認された。また、カムチャッカ半島のものとアムール川でもいくつかの遺伝子座における頻度での差が見られた。この差は、太平洋を回遊しカムチャッカ半島に上がるシロサケと、日本海を回遊しアムール川に遡上するもので、現在のところ交流がない表れであると考えられる。カラフトマスにおいては、現在同定されている遺伝子座すべてで、レトロポゾンの挿入は見られ、カラフトマス集団中では、その挿入が固定されているたいへん興味深い結果を得た。この結果は、カラフトマスがシロサケに比べて母川回帰率が低いため、河川特異性が失われやすく、そのためレトロポゾンの挿入が集団中に固定されるまでが、シロサケと比較すると数倍以上速かったためだと考えられる。現在のところ、レトロポゾンの挿入がシロサケ・カラフトマス2種間で共通に見られる遺伝子座は同定されておらず、種間で多型を示すことから、レトロポゾンの挿入によって2種が姉妹種であることは示されていない。今後、ベニザケを含めた3種の系統関係について詳細に研究を進め、今回の結果と合わせて研究報告する予定である。
|