研究課題/領域番号 |
05041089
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹中 修 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (00093261)
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研究分担者 |
バラブディ P. チュラロンコン大学, 理学部, 教授
鈴木 樹理 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (10175408)
VARAVUDHI Puttipongse Professor, Faculty of Science, Chulalongkorn Univ.
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1993年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | カニクイザル / マカク / 遺伝子 / αグロビン遺伝子 / マラリア抵抗性 / 形態 / 身体発達 / 環境適応 |
研究概要 |
生物はその生息環境に対して遺伝子を改変させることにより多様な適応を示す。高地や穴居生の動物が酸素親和性の高いヘモグロビンを獲得しているのもその一例である。ある地域特有の疾患も環境の一つに数える事が出来る。アフリカにおいて、鎌状赤血球症ヘモグロビンSをヘテロの状態で保有する人がマラリア感染に抵抗性を示す例も遺伝子における点突然変異による環境適応とする事ができる。本調査研究は、サル特有のマラリア原虫が多く発見されているマレー半島やスマトラのカニクイザルが、頻度高くαグロビン遺伝子を多重重複させていることの調査結果に基礎をおき、それらのサル達が、遺伝子重複により早くヘモグロビンを合成でき、マラリア適応性を獲得しているという仮説を考えた。これを検証するために、野生カニクイザルのマラリア自然感染を調査し、身体の生理的状態とグロビン遺伝子の多重重複状態を解析して、サル類の対マラリア戦略を考察する事を目的とした。 タイ国南部のヤラ、ナコンシタマラートの近くの寺院に生息するカニクイザルを対象とした。チュラロンコン大学に保管してあるナイロン製の漁網と購入した材木で捕獲檻を作りサルを一時的に捕獲し麻酔下に形態学的試料および血液試料を採取した。血液試料は直ちに塗沫標本、濃厚塗沫標本を作製しマラリア罹患状態を調べる試料とした。また現地に持参した携帯測定器により赤血球数、ヘマトクリット、ヘモグロビン濃度を測定した。残りの血液試料を遠心操作により血漿、バフィーコート、血球部分に分けドライアイス下、凍結状態で日本に持ち帰った。血漿はヒト用キットによりトランスフェリン、ハプトグロビンを測定し、溶血性貧血の可能性を検討するとともに、血漿の残余と血球部分はタンパク質の電気泳動分析による集団遺伝学的研究用試料として供給した。バフィーコート部分に含まれる白血球より通常の操作によりDNAを分離した。制限酵素BglIIにより切断しアガロース電気泳動により分離、サザンハイブリダイゼーション法によりαグロビン遺伝子の重複状態を調べる。 捕獲調査では同時に、生体計測を中心とした形態学的データを収集した。現在までに得られている計測結果を合わせた解析の結果、タイ産のカニクイザルは、インドネシア、マレーシア、フィリピン産のものに比べ雌雄ともに身体が大きく体重も重い事が明らかになった。タイ国内の生息地域間で比較すると、南部のパタルン、ソンクラのグループの身体が大きく、東北部のマハ-サラカムの群れの値が続き、最も小さかったのがパンガとヤラの群れだった。これらの結果は、南北方向で地理的なクラインが認められた遺伝学的解析の結果とは異なっていた。歯牙の萌出を指標にした推定年齢による成長の解析では、成長パターンの比較では飼育群との差は認められず、野生下でも良好な成長をしている事が推測された。 データは、1)αグロビン遺伝子の重複状態、2)マラリアの罹患状況、3)形態資料より健康状態および発達状態、4)赤血球関連の検査値、4)ヘムおよび鉄代謝関連の血液タンパク濃度を関連づけて解析する。
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