研究分担者 |
SOLTIS P.S. 米国, プルマン市 ワシントン州立大学, 教授
SOLTIS D.E. 米国, プルマン市 ワシントン州立大学, 教授
WHIGHAM D. 米国, スミソニアン環境研究センター, 主任研究員
UTECH F.H. 米国, カーネギー自然史博物館・植物部門, 主任研究員
森田 龍義 新潟大学, 教育学部, 教授 (30115084)
高須 英樹 和歌山大学, 教育学部, 助教授 (90108001)
大原 雅 北海道大学, 農学部, 助手 (90194274)
田嶋 文生 国立遺伝学研究所, 集団遺伝研究系, 助手
寺地 徹 京都産業大学, 国土利用開発研究所, 講師 (90202192)
宮下 直彦 京都大学, 農学部, 助手 (20212243)
寺内 良平 京都大学, 理学部, 助手 (50236981)
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研究概要 |
1.ユリ上目(Liliiflorae)植物98種の葉緑体DNArbcL遺伝子の塩基配列の決定を終了した。その結果、北東アジアと北アメリカ東部、西部に隔離分布するこれらの第3紀要素の分類学的帰属に関して以下のような新知見が得られた。(i)これまで類縁関係が不明であった北米産のUvularia属は、アジア産のDisporum属に近縁であり、2属を含む独立したUvulariaceaeを構成する;(ii)一方、北米産のDisporum subgen.Prosartes5種はすべてStreptopus属に近縁で、独立した属を構成する;(iii)Melanthialesは極めて異質なグループを含み、Narthecium,Metanarthecium,Aletrisは1つの独立したcladeをつくるが、Japonolirionは上記のグループに側系統をなすのに対して、TofieldiaはLiliiflorae全体に対して側系統となりAcorus属と並んで単子葉植物の中で最も原始的な位置を占める;(iv)これに対して、Melanthiales-Heloniadae連のChamaerilium,Chionographis,Helonias,Heloniopsis,Xerophyllumの5属は、Veratrum属やエンレイソウ科Trilliaceaeと同一のcladeをつくる。(v)Trilliaceaeの全6属(Trillium,Paris,Daiswa,Kinugasa,Scoliopus,Medeola)の塩基配列データの解析結果、ScoliopusとMedeolaの2属はエンレイソウ科には属さず、他のユリ科植物群のいずれかにむしろ近縁であった。(vi)Lilium,Cardiocrinum,Notholirion,Nomocharis,Fritillariaなど、狭義のLiliaceaeの各属はまとまった1つのcladeを形成する。類縁関係の解析にあたっては、近隣接合法、再節約法を採用し、さらに塩基置換のタイプを同義置換と非同義置換、コドンの位置、転移型と転換型に分け、相対速度テストを行い、系統樹作成の際の有効性についても検討がなされた。これらの成果によって、北半球の北米並びに北東アジアに分布するLiliiflorae全体の高次分類群の系統と類縁関係の解析が今後さらにに進展す
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ることが期待される。(vii)エンレイソウ属26種の葉緑体DNAの制限酵素断片長多型に関する解析が行われ、種間の類縁関係の解析が行われた。(viii)栄養繁殖をする北米産カタクリ属、エンレイソウ属無花梗グループの数種に関するアイソザイムを用いた集団生物学的解析が行われた(河野、大原、高須、Utech,Whigham;Shinwari,加藤、林-研究協力者)。 2.サトイモ科はLysichitum,Symplocarpus,Acorusの3属、ヤマイモ科はDioscorea属のrbcLの塩基配列が決定された。すでにAcorusは単子葉植物群の中で極めて原始的なグループに属することが判明している。ヤマイモ科のオニドコロに関しては、phosphoglucoisomerase遺伝子座のcDNA全長の塩基配列を決定した(寺内、河野)。 3.双子葉植物の中では、(i)ユキノシタ科、アジサイ科などの主要な第3紀温帯要素に関して北米産、日本産の属に関してDNAサンプルが採集され、rbcL,matKなどの遺伝子の解析が行われた。その他20属以上の第3紀要素植物群に関してもDNAサンプルの採集が行われた(D.Soltis,P.Soltis、河野、高須)。(ii)アブラナ科植物の中では、Arabis属のハクサンハタザオ8系統のadh遺伝子2.3kbの塩基配列を決定した。種内変異として61のヌクレオチドと25の挿入・欠失の多型を検出し、ヌクレオチド変異は全領域について0=0.0055と推定された。ハクサンハタザオとシロイヌナズナの塩基配列結果の比較を行ったところ、種内変異としては非同義置換が多く、同義置換が少ないが、種間においては同義置換が多く、非同義置換が少ないという結果を得た(宮下)。高等植物のミトコンドリアゲノムには、進化上重要な構造変異が集団間、集団内のレベルで高頻度で生じており、植物分子系統学の新たなマーカーとして有望視されているが、ダイコンとヒマワリのミトコンドリアゲノムの構造変異の解析を行い、雄性不稔現象との関連が検討された(寺地)。(iii) 東アジアに固有なキク科シオン連ヨメナ属および日本産シオン属から遺伝子重複(6PGDH)が発見されたので北米東部の林床性シオン属植物との比較解析が進められている(森田)。 DNA多型のデータから遺伝的変異の保有機構解析のための統計的解析方法の開発が行われた。また、分子進化の一定性を検定する方法、DNA配列間の進化的距離の不偏推定値を得る方法、系統樹を作成するために有効な進化的距離を推定する方法、および自家不和合性遺伝子座の遺伝的変異量を推定する方法を開発した(田嶋)。 隠す
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