研究分担者 |
ソムサック スクウォン タイ国社会林業研修センター, 所長
ホァン グェン ホン ベトナム国立大学ハノイ校(旧ベトナムハノイ師範大学), マングローブ生態系研究セン, 所長
日鷹 一雅 愛媛大学, 農学部, 助手 (00222240)
二宮 生夫 愛媛大学, 農学部, 助教授 (80172732)
PHAN NGYEN HONG Mangrove Ecosystem Research Center, Vietnam National University, Hanoi, Director
SOMSAK Sukwong Regional Community Forestry Training Center, Kasetsart University, Director
サンガ サパシイ タイ国研究会議, 議長
SANGA Sabhas タイ国研究会議, 議長
CHAN Hung Tu マレーシア森林研究所, 生態学研究部, 部長
SOMSAK Sukwo タイ国社会林業研修センター, 所長
PHAN Nguyen ベトナムハノイ師範大学, 教授
宮城 豊彦 東北学院大学, 文学部, 教授 (00137580)
小見山 章 岐阜大学, 農学部, 助教授 (60135184)
廣谷 博史 愛媛大学, 農学部, 助手 (70218858)
遅沢 克也 愛媛大学, 農学部, 助手 (30233539)
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配分額 *注記 |
15,000千円 (直接経費: 15,000千円)
1995年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1994年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1993年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
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研究概要 |
本研究は東南アジアの伝統的な社会習慣が自然生態系の生物・物理・化学過程にどのような人為的インパクトを与え、どのように調和的、持続的な社会生態系を作りあげたかを調べ、生態系修復の理論的根拠と技術的可能性を明らかにし、伝統社会が生物多様性を維持してきたメカニズムを解明することを目的とする。 調査対象地域にはタイとベトナムを選んだ。タイ国チャチェンサオ県では換金作物の集約農業によって、平地の熱帯林のほとんどが消滅している。森林再生の試みとして、保護区を設けその周辺域に村を移住させる製作で森林と農業の調和をはかろうとしている中で、社会林業の理論の確率と普及が進められている。源氏の保護区周辺域の農村の農業生態系の実態を明らかにするために、キャッサバ、トウモロコシといった畑、水稲作水田、果樹園といった代表的な農業生態系の土壌地力(塩基置換要領、Ph,Ec,主要栄養分濃度など土壌分析10項目)の比較調査を行った。また、これら農耕地と生態学的撹乱度の異なる陸上生態系との比較も同様に進めた。調査した村の周辺にある撹乱を受ける前の自然林、撹乱後の遷移の進んだ二次林、および人為的にアグロフォレストリーとしてつくられた擬自然林や植林地についても、土壌地力および、環境指標性が優れるとされる土壌動物相の調査をおこなった。調査の結果、地力と土壌動物相のデータから、人為的な撹乱作用をあまり受けていない自然林の生態系に近いのは、擬自然林としてつくられたアグロフォレストリーであった。農業生態系の中では、キャッサバやトウモロコシの連作はやや地力低下蛍光が認められ、その中にあって水稲作水田の地力が良好であると考えられた。農民に対する聞き取り調査からも、キャッサバ、トウモロコシの地力の低下蛍光は栽培年を追うごとの収量低下として表れてきていた。調査した移住村は4、5年目のものであるが、換金作物の単作による地力の収奪は懸念すべき問題であると考えられた。その点アグロフォレストリーを機軸とした多様複合作の栽培技術開発と保護区周辺村への導入普及が今後の大きな課題であると考えられた。 タイ国チャチェンサオ県内の上述の人工的な擬自然林、ユ-カリとアカシアの人工林、カオアンルナイ自然保護区の天然性林と二次林に永久調査区をもうけ、人為的に造成した森林と本来の自然林の各生態系の比較をおこなった。各調査地では樹種、胸高直径、樹高の毎木調査を行い、樹冠投影図、樹冠断面図を作成し、林分構造、種組成を比較した。擬自然林は天然生林と同程度の密度で造成されているが、種数は天然生林の半分程度であった。擬自然林は10年ほど前に造成されたが、平均胸高直径、平均樹高は天然生林と比べてほぼ同じであった。また10年生のユ-カリとアカシアの単一種の人工林にくらべて成長が遅いことがわかった。 ベトナムはマングローブ林および陸上林を対象として、資源利用と生物多様性に関する調査をおこなった。また伝統的な資源利用の調査として、各地における少数民族の資源利用についても調べた。調査地はマングローブ林として、北部のテンエン、南部のカンゾ-、カマウの各地区、陸上林として北部のクックフォン、中部のバックマの各地区を対象とした。またカマウ地区ではメラル-カ林でも調査をおこなった。各地区とも1973年の解放後、植林などにより破壊された森林生態系が修復されつつあったが、その後の人工増加のため再度生態系の破壊がはじまっていた。そこで、1985年より開始されたドイモイ政策により、一定の林地を地域住民に借与し、農林漁業複合経営を営ませることにより、生物多様性の保全と住民の生活向上を両立させる試みが始まった。各地区とも現時点では成功しており、森林生態系は回復しつつあった。林地借与には少数民族の移住も含まれており、小さな範囲では伝統的な資源利用の適用がみられたが、全体的な農林業複合経営に反映されることはなく、伝統的な資源利用のもつ調和的、持続的資源利用技術を発展させた社会生態系の構築が今後の課題であろう。 以上のタイ、ベトナムにおける調査により、伝統的な資源利用形体としてのアグロフォレストリーを機軸とした多様複合作の栽培技術あるいは農林業複合経営は、東南アジアにおける生物多様性の保全と生態系の修復、再生に有効な手段であると考えられた。
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