研究分担者 |
QIAN ZhiーGua 上海自然史博物館, 副部長
LIU PeiーGui 中国科学院, 昆明植物研究所・隠花植物標本館, 部長助教授
LIU ZhongーLi 上海自然博物館, 部長
服部 力 農水省, 森林総合研究所, 研究員
ZANG Mu 中国科学院, 昆明植物研究所・隠花植物標本館, 館長教授
阿部 恭久 農水省, 森林総合研究所, 室長
原田 浩 千葉県立中央博物館, 植物科, 主任技師 (60250148)
高橋 弘 岐阜大, 教育学部, 助教授 (40021331)
田中 千尋 京大, 農学部農薬研究施設, 助手 (60263133)
津田 盛也 京大, 農学部農薬研究施設, 助教授 (10026578)
八田 洋章 国立科学博物館, 筑波実験植物園, 主任研究官 (70132694)
内田 裕一 (門田 裕一) 国立科学博物館, 植物研究部, 主任研究官 (30124184)
樋口 正信 国立科学博物館, 植物研究部, 研究官 (10189772)
近田 文弘 国立科学博物館, 植物研究部, 室長 (60021945)
小山 博滋 国立科学博物館, 植物研究部, 部長 (90000132)
KADOTA Yichi Curator, Dept.of Botany, National Science Museum, Tokyo
銭 之広 中国上海自然博物館植物研究部, 副部長
王 立松 中国科学院昆明植物研究所, 研究員
〓 仲苓 中国上海自然博物館植物研究部, 部長
〓 培貴 中国科学院昆明植物研究所, 助教授
臧 穆 中国科学院昆明植物研究所, 教授
前川 二太郎 (財)日本きのこセンター, 菌蕈研究所, 室長 (00142638)
田中 次郎 国立科学博物館, 植物研究部, 主任研究官 (30167499)
柏谷 博之 国立科学博物館, 植物研究部, 室長 (10000142)
中池 敏之 国立科学博物館, 植物研究部, 主任研究官 (20000135)
|
研究概要 |
平成5〜6年度の現地調査で、まず、それぞれの調査地域の植生に関する観察資料と主要な植物の標本を収集することができた。各地域の植生を略記すると以下のとおりである。 浙江省・江西省の自然保護地域の標高800〜1,800ネートルの地域の植生は多くはいわゆる照葉樹林で、マテバシイ、シイ、カシ類などが見られ、上部はツガやマツが優勢である。多くの山頂は森林限界より低いが食用草本の採取のために人為的な草地になっている。 雲南省は南部の熱帯低地帯から北部の高山帯まで多様な植生が見られる。南部の西双版納地域は西部モンスーン気候下の熱帯・亜熱帯性の植生が見られる。二次林は浅い灌木林である。中部の標高2,000〜3,000メートルの地域の植生は二次林としてのマツ林、シイ林が多く、自然林は常緑のシイ、マテバシイ、Schima属の樹木などで構成される。北部の山岳地帯の標高2,500〜4,200メートルの地域は亜高山帯から高山帯の植生で、高山帯ではヤナギ類、イチゴ類や地をはうようなウバメガシの一種の密生が特徴的である。亜高山帯ではツガ、モミ、トウヒなどによって構成される森林や、カンバ類、カラマツなどで構成される森林が見られる。標高が下がるにつれ、マツ林、放牧用の草地が多くなる。 このような植生下の隠花植物や菌類について、以下のような調査結果が得られた。 1.シダ類:平成5年度の調査で中池が採集調査を行い、約500点の標本が採集された。この中には未記載の種が含まれ、目下研究中である。 2.蘚苔類:平成6年度の調査で樋口が雲南省北部山地で約1,000点を採集した。その中には数種の新種が含まれる他、ヒマラヤナンジャモンジャゴケの胞子体が採集されたのが世界で2番目の記録である。 3.地衣類:平成6年度の調査で原田が雲南省北部山地で採集調査した。その結果、アナイボゴケ科の2新種や中国新産種3種などが見出だされた。採集された標本点数は約1,800点に達する。 4.菌類:中国政府の承認を得て日本に持ち帰った乾燥標本は3,500点に及ぶ。目下日本産の近縁菌類との関連などについて比較検究中である。中国では菌類の系統分類学的研究が立ち遅れているため、中国新産種は多数見出だされた。その中には、ヒラフスベ、サジタケ、サワフタギタケ、ミカワタケなどの従来日本特産種とされていた種が相当数含まれる。津田らによって採集された、イネごま葉枯病菌やイネイモチ病菌は中国側研究者との共同研究のもとで、目下RFLPs分析法などを用いて種同定基準作成実験を行っている。 5.植生の研究に付随して採集された標本の中には、ユリ科のホトトギス属やガガイモ科の新種などが見出だされた。また、雲南省南部のショウガ科についてはインドシナとの関連が深いことが明らかになったが、タイ産の種とは異なる種があるようなので今後比較検討する予定である。 6.中国に日本産分類群と近縁の分類群が分布する場合、それら詳細な比較は、科博で従来長期にわたって調査研究してきた日本列島の植物相・菌類相の成立を考察検証する上で極めて重要で、今後この研究を展開し、必要に応じて長江に沿って東中国から雲南省、さらにタイやミャンマーの調査も行う必要がある。本調査によってすでに明らかになった日本産分類群と近縁の分類群には、種子植物のドクダミ、タケニグサ、ヤブデマリ、ヤマホトトギス、シュロソウ群などがあり、これらには様々なレベルでの分化が認められた。菌類についても同様の例があり、Hypocrea schweinitzii群にみられる多様な種内変異と種分化の例、近縁であるが日本産は別種に分化しているH.cornea群の例などが明らかになった。これらの種子植物や菌類についてはDNAレベルでの分子系統学的解析に着手した段階である。なお、採集した標本は、大半は昆明植物研究所に保管され、その重複標本の大半は科博に保管されている。
|