研究課題/領域番号 |
05041110
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤村 誠 京都大学, 人間・環境学研究科, 助手 (00187303)
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研究分担者 |
森口 秀幸 南リオグランデカトリック大学, 教授
森口 幸男 南リオグランデカトリック大学, 老年医学研究所, 所長
奈良 安雄 島根医科大学, 医学部, 助手 (80116417)
家森 幸男 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (80025600)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1993年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
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キーワード | 高血圧 / 遺伝子連鎖分析 / microsatellite / 遺伝子多型 / 家系調査 |
研究概要 |
最近の分子遺伝学的手法の発達に伴い高血圧発症に関与する遺伝子の検索が急速に進みつつある。この方法ではまず疾患に関与する遺伝子座位を統計的に推定し、そこから原因遺伝子を単離した後その機能を探る。この研究には、家族構成員に罹患者を有する家系を対象にする(連鎖分析)、罹患者と正常者を対象にする(関連分析)、兄弟の罹患者二人を対象にする(罹患同胞分析)場合とがある。このうち連鎖分析が最も解析力が強く、これまで主として高血圧モデル動物での分析に用いられている。モデル動物を用いた研究で明らかになった高血圧発症に関与する遺伝子領域は、その基礎的高血圧に関係するものと食塩感受性高血圧に関係するものとに大別できる。 基礎的高血圧発症に関与する遺伝子領域はリヨン高血圧(LH)ラットの場合収縮期、拡張期血圧ともにレニン(REN)遺伝子領域(第13染色体)と非常に強い連鎖が認められ、さらにカルボキシペプチダーゼ遺伝子領域(第2染色体)が収縮期血圧、および脈圧と非常に強く連鎖している。一方、脳卒中易発症ラット(SHRSP)の場合は、基礎的高血圧発、食塩感受性高血圧ともにREN領域とは連鎖せず、神経成長因子受容体(NGFR)遺伝子領域(第10染色体)およびロイコシアニン(LSN)遺伝子領域(第1染色体)が候補に挙がっている。しかしNGFR領域については報告者によって結果が異なり、我々の研究ではLSN領域とのみ強い連鎖が認められた。高血圧自然発症ラット(SHR)においてもLSN領域の近傍に存在するSA(SHRの腎に大量に発現している機能不明の蛋白質)遺伝子領域が基礎的高血圧と強く連鎖することが複数の研究者によって報告されている。従ってSHRやSHRSPの基礎的高血圧遺伝子の1つがこの領域に存在すると考えられる。 これに対して、SHRSPの食塩感受性高血圧についてはアンジオテンシン変換酵素遺伝子(ACE)領域(第10染色体)との強い連鎖を我々は認めているが、この結果は各研究者にほぼ一致している。ACEの生理的作用からこの酵素が食塩感受性高血圧の原因遺伝子の一つであると考えられたこともあるが、これを支持する生化学的な結果は得られておらず、我々の最近の検索によれば原因遺伝子はACEからNGFRを含んだ広い領域のどこかにあると考えたほうがよさそうである。ダール食塩感受性(DS)ラットは食塩を負荷して始めて高血圧を発症するため、食塩感受性高血圧遺伝子の検索に適している。このラットでは高血圧とSA、REN、ACE、ANF受容体遺伝子領域(第2染色体)との間に強い連鎖が認められる。しかしこの連鎖も対照として使用する正常血圧動物によっては認められないことがあり、これら4遺伝子は原因遺伝子ではなく、それらの近傍に真の原因遺伝子が存在するのかも知れない。実際、SHRやSHRSPでは基礎的高血圧、食塩感受性高血圧ともANF受容体遺伝子座位とは連鎖しない。 本研究においては、ヒトの高血圧家系を対象に連鎖分析を行なうことを目的に、ブラジル国ポルトアレグレ市の南リオグランデカトリック大学の協力を得て、血液サンプルを採取しそのDNAを分析した。この地域を選んだ理由は、第一に高血圧患者が多いこと、第二に大家族を形成していて連鎖分析に都合の良いこと、第三に降圧剤の使用率が低く薬剤投与の影響を最小限に抑えられると考えられたことによる。この研究では25家族、174人(男性58人、女性116人)について問診と血圧測定が行なわれ、このうち106人の高血圧患者(境界域高血圧を含む)が認められた。また130人から採血してDNAを抽出した後、日本に持ち帰ってmicrosatelliteの多型性に基づく遺伝子連鎖分析を行なっている。これまでのところACE遺伝子座位についての分析を終えているが高血圧との有為な連鎖は認められていない。他の研究者の報告でもヒトではACE遺伝子座位の関与は否定的である。一方、アンジオテンシノーゲン遺伝子座位とヒト高血圧との関係が最近注目されており、今後この部位も含めて多数の遺伝子座位との連鎖分析を進めていく予定である。
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