研究課題/領域番号 |
05041113
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
堀田 博 神戸大学, 医学部, 助教授 (40116249)
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研究分担者 |
片山 友子 神戸大学, 医学部, 助手 (10224461)
本間 守男 神戸大学, 医学部, 教授 (10004566)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
1993年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
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キーワード | C型肝炎ウイルス / サブタイプ / 慢性肝疾患 / 抗HCV抗体 / インドネシア |
研究概要 |
1.インドネシアに於けるC型肝炎ウイルス(HCV)感染症の疫学的研究 東部ジャワ地方(スラバヤ市周辺)の抗HCV抗体保有状況について調べた。第二世代ELISA法を用いた解析で、慢性肝炎、肝硬変および肝癌患者ではそれぞれ49%(27/55)、63%(38/60)および41%(12/29)が抗HCV抗体陽性であった。この成績は我が国の場合とほぼ同じで、インドネシアにおいてもHCVが慢性肝疾患の主要原因ウイルスであることが確認された。大学病院勤務医師の抗HCV抗体陽性率は3.4%(5/149)であり、インドネシアの健常成人の陽性率とほぼ同じであった。一方、同じ病院に勤務する看護婦および助産婦の抗HCV抗体陽性率はそれぞれ15%(3/20)および5.9%(5/85)と医師より高く、HCV感染のリスクが高いことが示唆された。 2.インドネシアに於けるHCVのウイルス学的研究 (1)新しいHCVサブタイプの同定 抗HCV抗体陽性患者の血清から、HCV遺伝子のコア領域、E1領域およびNS5領域をそれぞれ増幅し、その塩基配列をもとに、各HCV分離株の分子系統樹解析を行なった。その結果、インドネシアには、これまで報告されていない新しいサブタイプ(HCV-1d)に属するウイルス株が多数存在することが明らかになった。また、HCV-1d以外の新しいサブタイプ(HCV-3c)に属すると考えられるウイルス株も見出され、今後も解析を継続する必要性が示唆された。 (2)HCVサブタイプと肝疾患病態像との関連性について スラバヤ市周辺の抗HCV抗体陽性の慢性肝炎、肝硬変およびその他の症例についてHCVサブタイプの解析を行なった。慢性肝炎の45%(9/20)が我が国に最も多くみられるサブタイプと同じHCV-1bであり、20%(4/20)が今回新しく見出されたHCV-1dであった。HCV-2aは15%(3/20)にみられた。一方、肝硬変ではHCV-1bとHCV-1dがそれぞれ34%(11/32)に検出され、HCV-2aは13%(4/32)であった。HCV-1dは慢性肝炎より肝硬変に多く認められており、他のサブタイプに比べて肝病原性の強いことが示唆された。肝癌の症例のHCVサブタイプについては、現在解析を進めているところである。HCV-1aは上記52例の慢性肝疾患症例には1例もみられなかった。一方、血液透析患者では検索した3症例のうち2例からHCV-1aが検出された。血液透析とHCV-1aの関連性およびその意義については、今後も症例数を増やして解析を続ける必要性が示唆された。 今回サブタイプ解析を行なった計61症例のうち10例は、HCV RNAの存在が確認されたにもかかわらずサブタイプの同定を行なうことができなかった。これらの中には、未同定の新しいサブタイプ(またはタイプ)のHCVが含まれている可能性が考えられた。 (3)HCVサブタイプの地域偏在性について HCVサブタイプは地球的規模でみると地域偏在性を示すことが知られている。インドネシアは多くの島および多くの民族から成り立っているので、HCVサブタイプが国内の地域によって異なる可能性がある。そこでジャワ島の東隣のバリ島(デンパサール市周辺)のHCVサブタイプについて予備的調査を行なった。その結果、スラバヤ市周辺では全くみられなかったHCV-3aが検出された。現在、この地域での症例数を増やして解析を進めているところである。また、未だ開発があまり進んでいないインドネシア東端の島々(イリアンジャヤなど)のHCVサブタイプは上記のものとは異なる可能性も考えられ、今後それらの地域の解析を行なう必要性が示唆された。 (4)HCVコア蛋白に対する免疫応答の解析 HCVコア蛋白は免疫原性が強く、HCV感染者のほとんどに抗コア蛋白抗体の産生を誘導することが知られている。今回解析を行なった症例の中に、HCV-1aのコア蛋白、NS3あるいはNS4蛋白に対する抗体産生は十分にみられるにもかかわらず、HCV-1bに属するHCV-J株のコア蛋白に対する抗体産生の著しく低い症例が存在していた。この患者の血清からHCVコア蛋白遺伝子領域を増幅し、コア蛋白の推定アミノ酸構造について解析した。その結果、上記症例から得られたHCV株(Td-6)はHCV-1dに属し、そのコア蛋白は、抗体解析に用いたHCV-J株由来のものと比べると、推定二次構造が若干異なることがわかった。しかし、HCV-1dに属する他の株ではこのような差異は認められず、Td-6に特有の変異であると考えられた。コア蛋白およびそれに対する免疫応答の多様性について、より詳細な解析を継続する必要性が示唆された。
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