研究概要 |
地域研究の現状について、ドイツ、イギリス、オランダの各国において調査をおこなった。ドイツ、イギリスの調査は佐々木高明、田辺繁治が担当し、オランダの調査は松原正毅、飯澤隆夫が担当した。 1 ドイツにおける地域研究センターの現状 ドイツにおいては、ハンブルグのハンブルグ大学オリエント学学部(Fachbereich Orientalistik,Universitat Hanburg),アジア問題研究所(Institute of Asian Affairs),ベルリンのフンボルト大学アジア・アフリカ学部(Fachbereich Asien und Afrikan-wissenschaft,Humboldt-Universitatzu Berlin),プロシア文化財団イベロアメリカ研究所(Ibero-Amerikanishes Institut Preussischer Kulturbesitz)を訪問し、それぞれの組織の状況、活動内容について聞きとり調査をおこなった。ハンブルグ大学オリエント学学部のなかには、インド・チベット文化歴史研究所、中国言語文化ゼミナール、近東歴史文化ゼミナール、アフリカ言語文化ゼミナール、インドネシア南洋言語ゼミナールがふくまれている。フンボルト大学アジア・アフリカ学部には、アフリカ、中東、中央アジア、南アジア、東南アジア、中国、日本、韓国などの10学科がある。フンボルト大学はドイツ統一後の大学再編成の渦中にあり、10学科の講座の半分が充足されたところである。この両大学における地域研究は、教育を主目的に構成されたものといえる。アジア問題研究所の研究員は35人、南アジア、東南アジア、東アジアなどの現代的な問題についての研究と出版活動をおこなっている。1956年に開設され、蔵書約4万冊。プロシア文化財団イベロアメリカ研究所は、1930年創立された。蔵書約70万冊を保有し、ドイツにおけるラテンアメリカ研究の中央図書館としての機能をもっている。そのため、少数の学術司書をふくめ約80名の図書館スタッフがいる。これに対して研究部門のスタッフは5名と少数である。このふたつの組織は、いずれも研究蓄積より情報サービスに重心をおいた地域研究所といえる。 2 イギリスにおける地域研究センターの現状 イギリスにおいては、ケンブリッジ大学アフリカ研究センター(African Studies Center,University of Cambridge),オックスフォード大学中東・アジア研究センター(Middle East and Asian Studies Center,University of Oxford),ロンドン大学東洋アフリカ学院地域研究センター(Centers of Area Studies,School of Oriental and African Studies,University of London)を訪問し、現状調査をおこなった。ロンドン大学東洋アフリカ学院地域研究センターには、アフリカ研究センター、中近東研究センター、南アジア研究センター、東南アジア研究センター、コリア研究センター、日本研究センター、現代中国研究所がふくまれる。各大学に付置されたこれらの地域研究センターは、学部・大学院教育の連絡センターとしての機能の比重がおおきい。最近では、各地域に対する学術的な研究を組織し、ひろい視野から地域研究を推進してゆこうとする傾向があらわれてきている。研究対象地域としては、アフリカ、中近東、南アジアの比重が低下し、東ヨーロッパ、旧ソ連、東アジアへの関心が増大しつつある。 3 オランダにおける地域研究センターの現状 オランダにおいては、ライデン大学非西洋研究センター(Centre Of Non-Western Studies,Leiden University),国際アジア研究所(International Institute for Asian Studies)をおとずれ、現状調査をおこなった。ライデン大学非西洋研究センターは1988年に創設された。これは、極東、東南アジア、南アジア、中東、アフリカなどの諸地域を研究対象とする学科や研究センターの連合体で、学部・大学院教育に密接な関係をもつとともに各種の国際的シンポジウムの組織をおこなっている。国際アジア研究所は、1993年1月に創設された新組織で、インダス河以東の地域を研究対象とする。これは、ライデン大学、アムステルダム大学、アムステルダム自由大学、王立オランダ芸術科学アカデミーの四者によって運営される組織で、博士号取得後の若手研究者の研究プロジェクトを育成することを主要な機能のひとつとしている。現在のところ、これら三国において世界を対象とした総合的地域研究所は存在しない。
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