研究課題/領域番号 |
05041123
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立教育研究所 |
研究代表者 |
牧 昌見 国立教育研究所, 教育経営研究部, 部長 (70000057)
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研究分担者 |
坂本 孝徳 国立教育研究所, 企画調整部, 主任研究官 (10149297)
小松 郁夫 国立教育研究所, 教育経営研究部・学校経営研究室, 室長 (10130296)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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キーワード | ティームティーチング / 葛藤 / チームリーダー / コーディネーター / 教育課程経営 / 意思決定 |
研究概要 |
現在、我が国の公立義務教育学校では、平成5年度から6年計画で第6次公立義務教育諸学校教職員配置改善計画が実施されている。この計画は、個に応じた教育の実現を目的として、ティームティーチング等の指導方法の改善・工夫のための教員配置の改善を行っている。 ティームティーチング等の導入に伴う指導方法等の改善・工夫としては、個に応じた教育の実現のほかに、従来のクラス中心の固定的な学校組織・学校運営を柔軟なものにすることも期待されているが、それらは学校経営学上明らかにはされていない。 従って本研究ではティームティーチングを既に実施しているフランス、イタリア、イギリス、アメリカ合衆国において、(1)ティームティーチングの導入の形態、(2)当該国の学校制度等の背景とティームティーチングとの関係、(3)ティームティーチング導入に伴う学校運営への影響、を把握し、我が国の小・中学校においてティームティーチングを導入するにあたり、学校経営の観点からみた望ましいティームティーチングの形態、その学校組織上の位置づけの在り方、学校運営上配慮すべき事項等を明らかにする。なお、以下に実地調査の概要を記述するが、調査対象校は各国とも大都市圏に位置する数校であり、当該国の一般的状況を示すものではないことを付記しておく。 フランス、イタリア、イギリスの初等・中等学校におけるティームティーチングは、主に国語が充分に理解できない児童・生徒のため、特殊学級に入学することが可能な心身障害を持つ児童・生徒のために実施されている。なかでも、前述の国語指導のためのティームティーチングは、(1)学級担任と担当教員との次週の指導方法等についての打合せ時間を毎週末(金曜日)設けている学校が多い、(2)ボランティアによる指導も行われており、1教室に3人の指導者を置く場合も見られた、(3)授業を主に指導する教員が一斉指導する際に、他の1人の教員が教室内で個別指導を行う場合も見られた。なお、習熟度に応じ一般の児童・生徒を指導する場合もある。 アメリカ合衆国の初等学校においては、国語と障害児の指導がティームティーチングによって実施されている。とりわけ、国語の指導が合科指導の内に組み込まれティームティーチングで行われていた点は注目に値する。他方、中等学校(ミドルスクール)においては、歴史、文学、芸術及び国語、世界史等の教科を合科指導によりティームティーチングを実施していた。ティームティーチングの導入に関わり児童・生徒の側は、複数の教師からの指導を受けることにより学習効果が向上する、一方複数の教師から異なった方針や内容の指導を受けることにより混乱を起こす場合も見られるとの指摘がなされた。また、教師の側は、カリキュラムの準備や打ち合せのために仕事量が増加する、指導方針や指導方法で他の教師と葛藤が生ずる、などの問題が指摘された。 ティームティーチングを学校組織及び学校運営の視点からみると、(1)ティームティーチングの導入は教師の負担が増すことから、教師の同意を得る、(2)ティームティーチングの実施過程において教師間の意見の対立・葛藤は日常的に発生することから、教師間の意志疎通を意図的に図る、(3)教師がティームティーチングに非協力的な場合は、校長またはコーディネーターが教師評価を行い必要な処置をとる、等の事が肝要となり、当該校にティームティーチングを定着させるには4年〜5年を要するとの事であった。 調査の結果得られた我が国へのティームティーチング導入に関わる示唆としては、(1)協働してカリキュラムを立案し、指導することが必要であること、(2)指導にあたる教師は共通の目標を持って、他の教師と協力することが必要であること、(3)ティームを構成する際のリーダーは、専門的リーダーシップを持った者であることが必要であること、(4)ティームティーチングの計画、実施、評価の全てのプロセスを指導・管理できるコーディネータを学校におくこと、または教頭などがその役割を果たすことが必要であること、(5)学級王国から教師が抜け出し、学年や教科の枠を越えてティームティーチングに積極的に参加することが必要であること、(6)ティームティーチングに関わる研修を地方教育センター等が積極的に行う必要があること、などである。
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