研究課題/領域番号 |
05042004
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | がん調査 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鎌田 七男 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (00034629)
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研究分担者 |
李 建波 中国医学科学院, 血液学研究所, 研究員
葛 秀清 南通医学院附属医院, 講師
田中 公夫 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 助手 (70116622)
上田 龍三 愛知県がんセンター, 研究所, 部長 (20142169)
菊池 昌弘 福岡大学, 医学部, 教授 (80078774)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
1993年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
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キーワード | 非ホジキンリンパ腫 / 慢性リンパ性白血病 / 染色体分析 / 分子遺伝学的解析 / PCR / インド / FISH法 |
研究概要 |
1.研究背景 米国における濾胞性リンパ腫は全悪性リンパ腫の35%(対10万人口当たり3.4人)を占めるが、本邦では約5%(対10万人口当たり0.2)と非常に少ない。また、米国の濾胞性リンパ腫は約85%に14;18転座やbcl-2遺伝子再構成がみられるが、本邦症例では転座や再構成頻度は30%と非常に低い。また、慢性リンパ性白血病の発生頻度も本邦では非常に低い。このように本邦のリンパ性造血器腫瘍には明らかな地理病理的相違がみられる。本研究はこのような相違がアジア系人種に共通してみられるかどうかを日・中・印の症例解析より明らかにし、リンパ性造血器腫瘍発生機構の解明に資することを目的とした。 2.研究成果 (1)中国科学者との研究体制作り 日本側研究者2名が1993年10月9日より10月16日まで中国、南通医学院ならびに中国医学科学院血液学研究所を訪問し、慢性リンパ性白血病症例についての共同研究の可能性を討議した。葛班員および李班員、両名とも中国医学研修生(日中医学協会)として広島大学で細胞遺伝・分子遺伝学を修得して帰国しており、研究体制作りにはそれほどの困難はないと考えていた。しかし、現地視察の結果、72時間の細胞培養だけをみても充分行える状態とはなっていないことが判明した。昨年度、我々はfluorescence in situ hybridization(FISH)法を完成し、血液疾患に適用可能となっていたため、中国症例に関しては血液採血後、細胞分離や培養などを行わず、カルノア液に固定し、-5℃に保存しておき、一定時期に日本に運送して慢性リンパ性白血病に多いトリソミ-12やRb遺伝子欠損をFISH法で検討するという方法が最も可能性があるものと判断した。この点について双方が検討しあった結果、合意が得られた。 (2)日本症例における慢性リンパ性白血病(CLL)のFISH法による解析 昨年度、日本各地の血液学者の協力のもとに55名のCLL症例が蒐集され染色体異常、bcl-1,bcl-2,bcl-3の遺伝子再構成の頻度を観察し、発表した(Brit.J.Haematol.,1993)。 本年度には、この群の中で材料の残っている42例についてトリソミ-12とRb遺伝子欠損をFISH法で検討した。トリソミ-12は8例(19.0%)、Rb遺伝子欠損は12例(28.6%)に認められた。トリソミ-12の頻度は米国症例と比べて有意に低頻度であった。 (3)インド症例における慢性リンパ性白血病(CLL)のFISH法による解析 昨年度から本年度にかけて28例のCLLがインド側から提供された。予想をはるかに越える症例数であり、日本症例との比較が可能となった。FISH法によるトリソミ-12は8例(28.5%)に、Rb遺伝子欠損は11例(39%)に認められ、トリソミ-12およびRb遺伝子欠損の頻度がインド症例において日本症例よりやや高めに出たが、統計的有意差は認められなかった。 3.まとめ 中国側研究者は共同研究の希望は大いにあるが、細胞遺伝・分子生物学的レベルの比較は研究資材があまりに不足しているため当分可能性が少ない。唯一FISH法でかなりの病態解析ができるので、リンパ性白血病に限定せず、血液疾患での比較研究は可能であろう。一方、インドとの共同研究は初期の目的を達し、日本人症例にみられるリンパ性悪性腫瘍の特徴がインド症例においても細胞遺伝・分子生物学的レベルで見られることが明らかとなった。
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