研究分担者 |
LAURENTI Ruy サンパウロ大学, 副総長
IRIYA Kiyosh サンパウロ大学, 医学部・病理学教室, 准教授
KOWALSKI Lui Ludwig研究所, 疫学部, 研究員
TORLONI Humb Ludwig研究所, プログラムコーディネ
若林 敬二 国立がんセンター研究所, 発がん研究部, 室長 (60158582)
広橋 説雄 国立がんセンター研究所, 病理部, 部長 (70129625)
津金 昌一郎 国立がんセンター研究所, 疫学部, 室長 (40179982)
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研究概要 |
1.胃癌の症例対照研究 サンパウロ市内の11病院(A.C.Camargo,Clinicas,Heliopolis,Ipiranga,Nipo-Brazil,Sao Paulo,Servidor E.,Servidor M.,Sta.Casa,Sta.Cruz,Beneficienca Portoguesa)で診断された40歳以上80歳未満の日系人(一世および二世)、および非日系人(イタリア、ポルトガル、ドイツ系など)の胃癌患者と性・年齢(±3歳)・人種などをマッチした対照について、面接によるライフスタイル聴取と血液の採取を含めた症例対照研究を行った。 平成3年6月より患者および対照の登録が始まり、現在迄に、日系人胃癌65例、非日系人胃癌244例を登録した。また、98例の日系人対照と204例の非日系人対照の登録も行った。 これら登録対象者に対しては、食生活などの生活環境要因についての面接による質問調査、および血液20ccの採取も行い、血液は遠心分離して、血漿・リンパ球・赤血球にわけて、超低温下において、保存している。また、胃癌患者の一部については、胃癌部と非癌部から組織も同時に採取している。新鮮組織は、全患者からは採取出来てはいないが、日系人胃癌25例と、非日系人胃癌61例について収集されている。 非日系人胃癌に関しては、250ペアでの解析を実施している。また、日系人胃癌については、100例以上を目標に症例の収集作業を続行している。 2.日系人胃癌の臨床的特性 サンパウロのがん専門病院であるA.C.Camargo Hospitalにおける1953年〜1992年迄の日系人胃癌患者の生存率とステージを調査した。全例273例の3年生存率は23%であった。また、1982年〜1991年の10年間の104例に限ると29%で、国立がんセンター病院の同時期の74%に比較して極めて低く、この最も大きな要因は、ステージの分布の違いであった。 但し、日本全体の実態を表している考えらる、第4(1975年)および5次(1985年)悪性新生物実態調査における3年生存率各40%、45%と比較した場合は、半分程度となり差は小さくなる。 3.肺癌の症例対照研究 サンパウロでの共同研究を推進している過程において、リオ・デ・ジャネイロにおいて最頻のがんである肺癌の発症要因究明のための疫学研究のプロポーザルが連邦立リオ・デ・ジャネイロ大学よりあり、症例対照研究を実施することになった。サンパウロの胃癌症例対照研究のプロトコールを基本に、肺癌用に修正を加えて行い、123組(男性:99、女性:24)のペアが集められた。 人種的背景は、黒人が2割(24組)で、残りの8割(99組)が白人や混血であった。組織型の分布は、扁平上皮癌が80で65%、腺癌が25で20%を占めた。 対照の疾患の分布は、循環器疾患27%、皮膚疾患12%、整形外科疾患9%、眼疾患7%、外科疾患7%、泌尿器疾患7%、消化器疾患7%などが主なもので、多種類の疾患にわたっている。 出生地もリオデジャネイロであるものは、患者55%、対照42%、既婚者の割合は、患者59%、対照72、教育歴がないものの割合は、患者21%、対照13%、国の最低給与未満の低所得者の割合は、患者30%、対照18%と、肺癌患者は対照に比べて社会経済的地位の低い者の割合が多かった。 タバコについては、未喫煙者に対するシガレット喫煙のオッズ比が11、シガレットと手巻きタバコの併用者のオッズ比が74で、喫煙がリオデジャネイロの肺癌の発生に密接な関係があることが示された。また、喫煙指数、性、年齢、人種を補正した、シガッレット喫煙者に対する手巻きタバコ喫煙者のオッズ比も2.8と有意に高かった。また、喫煙開始年齢、喫煙期間、喫煙本数、喫煙指数、喫煙停止期間らとの間に明かな用量-反応関係も認められた。食生活との関連では、牛肉の摂取頻度との間に正の相関が認められた。 123組、246名の抹消血より抽出したDNAについて、近年肺癌の個体感受性のマーカーとし注目されているP450IA1の遺伝子型についてMspI polymorphismの検討も行った。A,B,C3つの遺伝子型の分布は、それぞれ63%、29%、8%であり、肺癌患者と対照との間に差を認めなかった。しかしながら、黒人と非黒人との間に、C typeの頻度に差を認めた。
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