研究課題/領域番号 |
05044005
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
高津 斌彰 新潟大学, 経済学部, 教授 (10018583)
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研究分担者 |
KASHIMA Tets ワシントン大学, 米国エスニック研究学部, 準教授
HODGE David ワシントン大学, 文理学部, 準教授
村上 雅康 関西大学, 文学部, 教授 (20015829)
堂前 亮平 久留米大学, 文学部, 教授 (50062857)
杉浦 直 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (50004495)
実 清隆 奈良大学, 文学部, 教授 (70001229)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1994年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1993年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | 世界市場形成力 / NAFTA / マキラド-ラ / 経営管理組織 / 経営のアシミレーション / 労務管理 / フィランソロピー / ジョブアサイレメント / アジア系企業 / 直接投資 / 労働力市場 / ローカルコンテント / 派遣人事 / コミュニティ / エスニック企業 / フィランソロフィー |
研究概要 |
アメリカ西海岸におけるアジア系企業の展開と労働力調達 日系企業のアメリカ西海岸地方への進出は、1970年代及び1980年代ともに順調な伸びを見せており、1970年代に比べて1980年代の伸びが若干鈍化する日系企業のアメリカ全体への進出のパターンより、アジアを含めた日系企業の世界的展開のパターンににている。また1992年をピークとして以後進出の減少が始まった。これはわが国のバブル経済の崩壊による資金繰りの悪化とアメリカ市場の低迷による。 西海岸への日系企業の進出動機は一般的に、労働力志向ではなく、国際情報と消費トレンド・世界市場形成力を志向しており、製造業よりも販売業、不動産業、金融業、サービス産業系が多い。特にカリフォルニア州ではこの傾向が強く製造業が少ない。それに比してワシントン州やオレゴン州では比較的製造業の進出立地が見られる。ワシントン州では漁業や林業関係に加えて飛行機及び関連部品、オレゴン州ではハイテク関係の進出が比較的多い。それぞれ地域経済構造、経済環境に少なからぬ関係を有している。しかし近年のワシントン州における漁業や林業関係はサケ・マス資源保護問題や国内林産資源保護などから営業を縮小したり、営業転換或いは多様化が進んでいる。 1994年1月1日のNAFTAの稼働によりワシントン州の米国任天堂など日系企業の中にはマキラド-ラ以上にメキシコへの低賃金労働力志向による進出する傾向も見られる。そしてメキシコへの先行進出日系企業にとっては新しい競争の激化となる。メキシコ在の日系企業には当分のあいだ税の割戻し制度を実施するとの政府の説明であった。 企業の経営管理組織については日系企業は、やはり管理組織、管理部門には日本人の現地派遣がヨーロッパ系に比べて多く見られる。しかし製造業部門では、日本からの派遣人員はかなり少数となる。中には副社長のみを現地に常駐させるのみにして、現地法人社長をはじめ多くの管理職には現地アメリカ人を当てる会社(セメント系)も見られるに至っている。特に労務管理部門には現地のベテランを活用することや微妙な労務管理の現地文化を大いに学ぶことも適当であろう。中には若い心理学を修めた女性が労務管理に当たるケースも見られた。日本の親会社の頭取は年数回のボードミーティングに参加するのみである。しかし西海岸の非製造部門では、未だに管理職部門を日本人派遣人員で固めてい
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るケースも見られる。これについてはさまざまのケースが見られることから詳細は本論にゆずるが、未だに現地人スタッフからの低い現地化比率が問題にされることがある。 労働力調達については、意識的な差別的雇用は全く存在しないにも関わらず、結果としてマイノリティの雇用比率が低く、批判があることに注意する必要がある。婦人に対する昇進の日本的待遇が残っており、不満や訴訟事例もある。しかし、採用時の契約とジョッブアサインメントの明示によって、「早朝出勤」や「お茶汲み」など率先して、勤務する事例も少なくない。ここに会社ごとの社会リクレーションや社内パーティ開催など日本的労使関係のプラス要素がそのまま適用されていることを見ることができる。労使共同の社内行事は西海岸ではかなり普及している。労働力調達方法は種々あるが、西海岸では斡旋業者に依頼するケースが少なくない。トラブルをかなり避けることが可能となる。 労務管理においては、日本的管理と異なり、特別のベテランをおくか、ノンユニオンの雇用を確保するかしないと、ユニオン=組合のコントロールが強く、生産性に影響が現れたり、トラブルも発生することになる。賃金体系が職能別が基本であること、労働組合が地区別、職能別が原則であることから、あるセメント会社では、一工場の中に数種の職能組合があり、生産の連続性と補完性を期待することがしばしば難しい場合も生じ、必然的に現地人の労務管理のベテランを要することになる。組合交渉に時間と回数(20回)を要することにもなる。 日系駐在員の問題としては、1.長期単身赴任による日本に残された家族の問題。2.本人の現地地域社会或いは企業内の現地人家族との交際の問題。3.家族同伴の長期滞在者の場合は逆に子弟・子女の日本社会への逆適応、4.カイシャマン・カイシャキッヅが問題となり、5.駐在先に家族を残して本人のみの「逆単身赴任」の問題も現れる。 日系企業のフィランソロピーについては、地元の要望と文化に合わせたアメリカ任天堂のごとく日常的な貢献というより、アメリカ野球のメジャーリ-グの買い支えなど特異なケースもあり、ようやく多様化してきていることが確かめられる。しかし多くは典型的は日本人的行動にたより、自己の会社の判断や行動によることを避けて、団体や組織を通して行動するケースも見られ、地元民に対する印象が薄れてしまうケースがめだつ。しかしシアトルあたりでは充分地元に、融け込んで、企業のみでなく個人としての社会貢献も現れており、随分洗練されてきているケースも見られる。積極的な地元への接触と交流の運動は、地元の日系企業の親睦団体(シアトルの春秋会、ロスアンゼルスの日本商工会議所など)や日本領事館の協力も見逃せない。ここでは日系企業の文化適応という面が見える。 隠す
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